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わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2024.01.13

三澤邸から学ぶ、木の家づくりの原点

Ms日記をご覧の皆さま、本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

はじめに、元旦から能登半島地震があり、被害を受けられた皆さまには心よりお見舞い申し上げます。

さて、本日のMs日記では、昨年12月に見学会等で3度三澤邸に入る機会があり(私たちスタッフも普段はあまり入りません)、改めてMsの仕事の原点となる「木の家づくり」に触れて感じたことをお伝えしたいと思います。

三澤邸が建てられたのは、1985年(39年前)のこと。若き三澤康彦さん・文子さんが千里ニュータウンという郊外の住宅地で、ご夫婦で設計活動を始めるにあたって取り組んだ初期の仕事です。木造で「真壁構造(柱や梁の架構がみえる構造)」の住まいですが、設計事務所でこのような提案するのは“非常に珍しいこと”であったと聞いています。

久しぶりに三澤邸に入りましたが、自分自身「やっぱり、木の家はいいなあ」と心から思うことができました。それは、長い時間を経てもなお、凛とした美しい佇まいであること、そして木の表情が生きていることを感じるからだと思います。

三澤邸で使われている木(杉)は、決して特別なものではありません。文子さんによると、まだ本格的に勉強をはじめた時期で、「節も多く、乾燥も不十分であった」とのこと。しかし、それでもなお、訪れた人の心に安らぎを与えるような力があります。

上写真は、中二階になっている仏間の様子ですが、ここは通常の910mmモジュールではなく、960mmモジュールを用いていること、出窓(障子)を設けることで、空間に広がりが出ています。

高さ650mmのダイニングテーブルと、低座の椅子の組み合わせは、現在も変わることなくMsが提案している暮らし方。限られた日本の住まいのなかで、ソファーセットを置くのではなく、ダイニングテーブルを中心とした、低く座りやすい椅子(豊口克平さんや秋岡芳夫さんの椅子)の生活は、やはり快適で暮らしやすいと思います。

私たちスタッフにとっても、文子さんの解説を聞いて、現代の木の家づくりの原点をまなぶ貴重な機会となりました。

なにが本質なのかを考えた際、頭に思い浮かぶのは、『決して、設計(デザイン)だけではない』ということ。           端的に(誤解を恐れずにいえば)、『木』と『大工』の2つを大切にするということ。

昨年復活したMOKスクールでも、繰り返し、『木(森林・林業・製材)』のこと、『大工(職人・技術・道具)』のことを学びました。

私たち設計者も、初心を忘れずに仕事をしていきたいと思います。

さて、少しおまけの話です。

上写真は、三澤康彦さんが亡くなる前の2016年冬の最後の仕事の日に、「冬休みに、この本を買って読みなさい」と勧めていただいた本です。私だけが勧められたので、よほどセンスがないのかと少し気落ちしたことと、「三澤さんがこんな本を読むんだ」と意外に思ったことを覚えています。

『センス入門(松浦弥太郎さん著)』

昨年は三澤康彦さんの7回忌にあたることもあり、久しぶりに読み返しました。

「センス」という言葉には、取り付きにくい響きがありますが、本の内容はまったく違って、すごく面白く、誰にでも受け取りやすいものです。

「何を選ぶか」「どう判断するか」から始まり、「自分のスタンダートを持っていること」がセンスがよいということが書かれていて、自分の軸をしっかり持っていた三澤さんの一貫した仕事ぶりを表していると感じました。寒くて外出が億劫な日に、皆さまも三澤さんお勧めの本を手に取ってみてはいかがでしょうか。

上野耕市