Loading...
わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2025.11.22

丸福町家・耐震性能について

エムズ日記をお読みの皆さま、こんにちは。11月も後半となり身も心も引締まる時期となりました。今回のエムズ日記は非常勤スタッフの鈴木が担当いたします。前回、前々回は、丸福町家の温熱性能、省エネ性能について書きましたので、今回は耐震性能についてお話しようと思います。

前回前々回のエムズ日記はこちらからお読みいただけます)

丸福町家は香川県丸亀市に昭和3年に建築された長屋住宅で、今年で築97年になります。祖母から引き継いだ後、しばらくの間、空き家となっていましたが、このたび改修工事を行い、今年2月末に竣工しました。現在は生活しながら改修後の住まいを体感しています。

(改修後の建物の写真はこちらの作品事例のページをご覧ください。ページの一番下の「Report」より、改修前の詳細調査から工事完成後の様子まで、シリーズでお読みいただけます)

2年前の8月にエムズのスタッフと丸亀近隣の住宅医で詳細調査を行った結果、構造躯体の劣化が進行していることや、耐力壁が少なかったことから耐震性能は、長期優良住宅(増改築)認定基準の耐震等級1を100点とした場合、祖母の家は7点でした。この評点は大地震時には建物が倒壊する可能性が高いという判定になります。また地盤についても、地耐力が弱いことや地震時に液状化の可能性があることが判りました。

詳細調査時の建物の外観

そのため、改修設計では既存の玉石基礎を鉄筋コンクリートのべた基礎に変更を行い、剛性のある基礎とし、上部構造は強風や地震時に受ける横方向からの力に対して、建物の変形を抑える耐力壁を、外壁に合板を張って設けることとしました。

その対策により耐震の構造評点を1.5以上とし、大地震時の損傷ランクは『倒壊せず』で『小破』となることを目指しました。

下表の赤丸は改修前の耐震性能、緑丸は改修設計の目標性能

(ヤマベの木構造(新版)420頁より引用)

これらの構造補強の設計は、秋山建築住宅設計室の秋山さんにお願いし、私は構造図面に反映させていきました。また現場監理で構造図面通りに施工がされているか確認を行いました。秋山さんはエムズのOBで、改修設計が初めての私に親切に構造補強の説明をしてくださいました。

金物検査時には秋山さんも現場に立会いをしてくださいました。

既存の土壁を出来る限り残すため、外壁に張る構造用合板は、1階は屋内側に、2階は屋外側に張るなど、現場で遭遇する状況に対処をして、竣工建物の耐震性能は設計時の目標値の評点1.5以上を確保することが出来ました。

下の写真は2階外壁で構造用合板を屋外側に張ったところです。

改修工事によって下図のように耐震性能を向上させることができました。

今、私は丸福町家が改修によって、耐震、温熱、省エネ、劣化などの性能が、どのように向上したのかをレポートにまとめており、それを持って来月20日に開催される住宅医検定会を受検し、住宅医の認定取得を目指しています。

住宅医とは、既存住宅の調査・診断・改修・維持管理などについて、優れた知識・技術をもつ実務者として、住宅医協会が認定している建築士です。受検者は住宅医スクールを受講・修了し、さらに、自らが行った改修の仕事を住宅医検定会の場で発表し、合格した場合に住宅医として認定されます。

(住宅医についての詳細は、こちらをご覧ください)

私は、2023年度に住宅医スクールを受講し修了しましたが、昨年度も今年度も繰り返し受講しています。受講する度に、自身の理解度が深まっていることを感じます。

つい先日の1115日には今年度の最終講義があり、大阪の福島にあるフクマチヤで受講しました。講義のテーマは、既存住宅の基礎や軸組の改修方法についてで、講師の鈴木竜子さん(山辺構造設計事務所)と文子さんが掛け合いで、実例をもとに説明をしてくださいました。

今回の講義を受講して改めて、丸福町家の改修工事では住宅医スクールで学んだ事を活かすことが出来たと思いました。

特に講義の最後に鈴木竜子さんが話された、「改修の仕事は悩むことが多い。それをのりこえるためには、柔軟に考えることが大切!」という言葉が心に残りました。丸福町家の現場でも、基礎施工時に延べ石が出てきたりなど、悩むことが多くあったなぁ、と・・・。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。

鈴木康之