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わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2024.07.27

令和6年能登半島地震の被害調査に行ってきました。

Ms日記をご覧の皆さま、こんにちは。

今週のMs日記では、7月上旬に行った石川県輪島市黒島地区の被害調査について書きたいと思います。

令和6年能登半島地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、1日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

黒島地区は、平成18年の能登半島地震以降、地元の方々が伝統的な街並みを保存しようと尽力し、平成21年に重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。黒い釉薬で塗られた瓦と下見板張りの外壁、それから開口部の格子が特徴的な地区ですが、今年の元旦に起きた令和6年能登半島地震による被害が至るところに見受けられました。

写真の通り、外壁の崩落や瓦の落下などがあり、ブルーシートで養生している住宅が多くあります。

電気は、いまだ復旧していないところもあり、昼間も家の中では懐中電灯が必要なほど暗いです。

下の写真は、国指定重要文化財に指定されている「旧角海家住宅」です。輪島市に現存する、黒島地区の代表的な廻船問屋住宅で、明治4年の大火の後、地元の名匠・工野藤兵衛により、配置や構造が元通りに再建されたと伝えられています。平成19年の能登半島地震によって大きな被害を受けた後、平成23年7月に復元工事を終えたのですが、今回の地震で再び大きな被害を受けてしまいました。

2つの棟に分かれた建物が、梁の継ぎ手(建物の接合部)のところで完全に分離してしまっていることが分かります。接合部の柱は完全に折れてしまっていますが、奥の建物は大きく傾いてはいるものの、倒壊は免れています。

保存地区内を歩くと、黒く光る瓦葺きの屋根が建物とともに崩れてしまっているのが目に入ります。瓦をよく見ると、きっと職人さんの手によってとても丁寧に造られたのだろうと感じられ、とても心が痛みます。

倒壊せずに建っている建物でも、柱脚を見ると延べ石から50mmほどずれているもの、完全に束から外れて建物自体が傾いている住宅など被害の大小はありますが、危険な状態のまま建っている住宅が多くあります。

これは黒島地区の海岸線の写真ですが、地震によって地盤面が隆起している様子を写した写真です。手前にあるテトラポットより先にみえる岩礁は、すべて隆起して海面よりも上部に出てきています。写真奥に見える防波堤の色が変わっているところが、海面のレベルだったと考えると、かなり隆起していることが分かります。金沢市から黒島地区に行くまでの道路も、凸凹としたところがあり、隆起した影響と思われる場所がいくつかありました。

地震の被害を受けた建物を実際に目にした経験がこれまでになく、今回同行した調査で初めて地震の威力を目の当たりにしました。実務で設計するにあたり、日本にいては避けられない自然災害の一つである地震について、もっと深く知り、考えなければならないと強く思いました。また、同時に黒く光る美しい瓦葺きの屋根と、地区全体で統一された下見板張りの外壁を構える家々が連なるこの黒島地区の、1日も早い復興を強く願います。

今週末も黒島地区の調査に行きますが、より早い復興の糧となるよう、また新たに新築、改修の設計をする建物の安全性につなげられるよう被害状況等の調査を行います。

(小西)