Loading...
わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2023.01.28

創造的な灯り~ガイシをベースに~

年明けから早1ヶ月、寒波の便りが届き、皆さまいかがお過ごしでしょうか。今週は気の抜けない寒さが続いていますが、来週には立春がまいりますので、着実に春は近づいています。

今週のMs日記は、照明のお話です。

事務所の窓辺には、ガイシ(碍子)の電球用ソケットのサンプルが並んでいます。

ガイシは、電気配線用部品の総称で、電線の絶縁性が低かった時代に陶器製(絶縁体)のガイシが使用されていましたが、現在はその必要がなくなり一般的にはあまり見られなくなりました。

ガイシのソケットは、Msの照明計画における基本部品です。シンプルなデザインと陶器の素材感は、Msが設計する建物との相性もバッチリです。電球の交換も容易で、お好みの明るさや光色に変えられるというメリットがあります。例えば、暗めの照明がお好きな方がご高齢になり、より明るい照明が必要になった際には、明るい電球に交換するだけで済みます。もしLED一体型照明器具だった場合、器具ごとの交換が必要になり工事費が発生してしまいます。(詳細は、こちらの記事をご参照ください。)

ガイシを基本にしながら、オリジナル照明を造ることもあります。

階段のフットライトは、コーナーのR壁にあけた穴に箱を埋め込み、ガイシを仕込む造作照明です。アクリル板(乳白色)の前板に入れることで、光が和らぎます。前板は容易に取り外せるため、電球交換も可能です。

大工さんがつくる照明ですから、穴の形状を丸くすることもできます。

この照明は、「鳥箱」(三澤文子+永田健一)と名付けられたオリジナル照明です。メープル材でつくられた箱の中に、ガイシと電球があります。前板は上にスライドさせれば取り外せるようになっており、電球交換が容易です。

前板の素材を杉板に変えれば正面の光をことなくすができ、光量を調節できます。上下の壁や天井を照らす灯りの落ち着いた雰囲気が、柿渋の天井や漆喰の壁とよく合っています。

これはアイランドキッチンのシンク上の照明(三澤文子+永田健一)です。透かし彫りの入った杉板の箱にE17のガイシが2つずつ入っています。規則的に並んだ梁の間にぴったりと納まっており一体感のある仕上がりは、オリジナル照明だから実現できたといえます。

リビングテーブル上の箱照明です。ワイヤーで吊っていますので、化粧垂木の並んだ勾配天井にも問題なく設置できます。よく見ると、各コーナーに2箇所ずつ異なる樹種の「ちぎり」が入っており、アクセントになっています。

最後に、事務所の打合せスペースにある箱照明をご紹介します。6つのガイシが埋め込まれています。天井(右側)に取り付けられた照明は、吹抜(左側)に片持ち梁のようにとび出しており、ほどよい緊張感がありますね。

これからもレトロでシンプルなガイシをベースに、創造的な照明デザインが生み出されていくのが楽しみです。

(松岡利香)