Ms日記をご覧の皆さま、こんにちは。夜風がとても心地のいい季節ですが、日中はだんだんと暑さを感じるようになり、もうすぐ梅雨入りかな…と空を見上げるこの頃です。そしてもう一つ、梅雨の訪れを感じるのは…
「古江台の家」の庭に咲く紫陽花です。先週ごろから少しずつ花が咲き始めました。と、いうことで今回のMs日記では「古江台の家」について書きたいと思います。
4月1日から始まった工事は、順調に進み5月中旬に建て方を迎えました。既存のRCの住宅とは、構造的には縁が切れているため、手前の増築部分のみで安定する構造になっています。脚立の上で仕口の微調整をしているのは、棟梁の入江さんです。
朝、土台敷から始まった建て方は西日が差し込み始めた夕方早くに棟まで上がり、無事に完了しました。写真が少し暗いですが、棟を上げ終わり降りてくる大工さんの顔はとてもにこやかです。建て方を見るのは2回目ですが、新築時の建て方とは異なった難しさがあることを実感した1日でした。
この写真は、建て方以降に始まった定例打合せの様子を写した写真です。現場監督の和田さん(右手前)をはじめ、板金屋さん、大工さん、そして文子さんで屋根の板金のおさまりについて打ち合わせをしているところです。たった20mmか30mm四方のうちに納まる細部のちょっとした納まりの違いで水仕舞いの性能が全く異なることを知りました。餅は餅屋ということわざがありますが、大工さんや職人さんと話すといつもこの言葉を思い出します。ですが、住宅一つが竣工するまでの一本の線を書き連ねる設計者として、何においても餅屋になれるようまだまだ積み重ねていきたいです。
実は、増築棟が3つある「古江台の家」。冒頭の通り、1つ目の増築棟の建て方は終わりましたが、まだ2つ残っています。大工さんが墨付け、刻みを実際にしているところを見たことがなく、せっかくなので見に行きたいとお願いして、羽根建築工房さんの加工場に行ってきました。写真は、棟梁の入江さんです。仕事の合間に、何をどう考えて刻むのかを教えていただきました。それは、1mmほどの一本の墨の真ん中で仕上げるのか、それとも一本の墨を残すのか、あるいは墨が消えるように削るのかなど、とてもシビアな世界の話でした。
1回目の建て方のとき、柱が建ったときに番付が一直線にそろうようにと墨で番付されているのをみたとき何とも身が引き締まる思いでした。加工場で入江さんが刻んでいる様子や刻まれた構造材を見て、これらの丁寧でかつ正確な仕事の上にこの一直線に揃った柱たちがあり、ひとつのが住まいが成り立つことを感じました。このMs日記が公開されるころ、2回目の建て方があります。その後も工事は続いていきますが、ひとつひとつ大工さんや職人さんの仕事を見聞きして学び、設計は設計屋に、と自信を持てる設計者に近づきたいです。
小西