Loading...
わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2023.03.25

宍粟市のこども園がまもなく開園します!

約2年前に設計がスタートした、こども園『宍粟わかば』が4月にいよいよ開園を迎えます。本日は一足先に、完成直前の現場写真を用いて新しい園舎をご紹介したいと思います。

『住宅のような木造園舎をつくりたい』 園長先生のご要望に応えるように、こども達の“住まい”として丁寧に設計を進めました。園庭をぐるりと囲む「C型」の建物配置は、三澤文子さんのファーストスケッチから始まりました。美しい自然環境と調和する”集落”のようなイメージです。

低く深い軒先(1.5M)に木造の良さが現れています。こども達は、園庭から「濡縁」を介して直接保育室に入ることができます。園庭側の外壁にはすべて地元の杉板を張りました。施工は地元の山弘(ヤマヒロ)さん。木材調達はしそうの森の木さんです。

道路側のエレベーションは、水平線が伸びやかにシャープな印象に仕上げました。背後に宍粟の山々が連なる美しい立地です。

アプローチでは、『宍粟わかば』の真鍮製のサイン(松井匠さん/森林文化アカデミー)がこども達をお出迎えします。あえて、エイジング(経変変化)する素材をセレクトしています。

01歳児室には専用の園庭をつくりました。すぐ目の前に、墓地の「桜の大木」があり枝葉を伸ばしています。『まるで地域のご先祖さまに見守られているようです』という三澤文子さん。この場所が特にお気に入りです。

続いて内部のご紹介です。玄関ホールの“床下がり部”には「赤色」のカーペットを敷き、低年齢のこども達が遊ぶエリアをつくりました。(=遊びホールと呼んでいます) 建物見学の際に、『”やさしい”デザインですね』とお声がけ頂いたことは、設計チームにとって何よりの誉め言葉でした。

01歳児室の床は桧、腰壁は杉板で仕上げました。赤いベンガラ塗の丸柱の両脇に、沐浴と調乳スペースがあります。両側の壁に「吊収納」を設けました。

奥には「サブルーム」があり、お昼寝など生活リズムに合わせた保育ができるように配慮しています。

「地域子育て支援室」は、一時保育や地域の皆さまと交流するためのスペースです。低いソファやキッチン・照明などはMs定番のデザイン。凹凸のある壁は、大工さんの感性に委ねた「ブック型吸音パネル(杉板のランダム張り=音の乱反射)」です。

広縁(奥行2.73M)は、新しい園舎の特徴の一つです。建物は「準耐火建築物」として計画しており、「燃えしろ設計」の手法を用いて、通常より太い登り梁(JAS材:150mm巾)を現しています。

25歳児室の床には「栗(くり)」を用いています。音の反射を抑えるため、あえて平天井をつくり、天井面には「吸音材(パーフェクトバリア吸音パネル)」を貼って仕上げました。音環境の対策は、これからの幼児教育・保育施設に特に大切なポイントとなります。

そして、遊戯室です。がっしりと力強く組み上げられた“樹状トラス”による大空間をつくりました。(構造設計:稲山正弘さん・岩田聖司さん/ホルツストラ) 高窓から見える緑が映え、この場所にしかない景色となりました。

『地元の山の木と大工さんの手仕事で木造園舎をつくること』

Msとしても新しいチャレンジでしたが、本当にたくさんの皆さまのご協力を得て完成することができました。この場をお借りして、皆さまに深くお礼申し上げます。

4月から登園されるこども達・お父さんお母さん・ここで働く保育士の先生、そして地域の皆さまが、元気に、楽しく、毎日を健やかに過ごしていただけることを、心待ちにしています。

上野耕市