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わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2024.05.11

担当者として。「図面を描く」ということ。

Ms日記をご覧の皆さま、こんにちは。上野です。Ms日記に登場するのは久しぶりですが、2024年の年明けから、ある大きなプロジェクトに参画しており、どっぷりと「図面を描く」日々を過ごしておりました。

ゴールデンウィークに、改めて「図面を描く」という設計事務所の仕事の本質について、思考をめぐらす静かな時間がありました。また、55日は、2017年に急逝された三澤康彦さん(以下、三澤さん)の命日で、この日は、毎年のように三澤さんからご指導いただいた時間が自然に思い出されます。そこで、今回のMs日記では、少し昔を振り返りながら、「図面を描く」という、日々の仕事で大切に考えていることをお伝えしたいと思います。

私がMsに初めて訪れたのは、2013年の夏。インターンシップ生として、三澤さんにご指導頂いたことがはじまりです。上写真は、三澤さんのデスク(撮影は2018年)ですが、トレーシングペーパーに鉛筆で書かれる線がとても美しく、感動したことが忘れられないです。三澤さんの強烈!なエネルギーに、ややたじろぎならがらも・・、インターンシップとしては異例の3か月間という長期にわたりご指導頂いたことが、木造の設計をはじめる最初の一歩となりました。

当時、前触れもなく『ワンデイ設計を始めます!』と言われて、三澤さんが即興で作成した課題が与えられ、丸一日(24時間)かけて計画をまとめる機会がありました。その後、三澤さんのチェックを受けながら、約2か月をかけて、実施設計図面を描くトレーニングを行いました。写真は、私がMsではじめて描いた研修時の図面です。

三澤さんからは、『一本一本の線の意味をしっかり考えながら図面を描くこと』を教え頂きましたが、とてもすべて理解することはできず・・、見よう見まねで図面を描きました。特に、『Msでは“真壁構造”の木の住まいをつくるため、“構造図”までしっかり自分の手で描くことを大切にしている』といわれたことが強く印象に残っています。「木拾い表」という、柱や梁の長さや数量を拾う方法も教えて頂きました。

それから、10年ほど時が流れ、三澤さん亡き後は、文子さんにご指導いただきながら、実務で図面を描いてきました。そのなかで、いちばん大切だと思うのは、「伝える・伝わる」図面を描くということ。

図面は、私たち設計事務所にとって「アウトプット(成果物)」になりますが、施主・施工者の3者を結びつける「伝達手段」にもなり、工事を進めるための「手引書」にもなります。相手に伝わって初めて、図面が役に立ちます。特に、”担当者”としては、法規・コスト・施工性などの諸問題を誰よりも早く察知し、事前に解決した上で図面にまとめていく力が求められます。陰ながら、静かに図面に向き合う時間は、ある意味とても「孤独」な時間です。

事務所のロフトには、過去の先輩方が描いた図面がびっしり並んでいます。これまでは、ひとりで一つの物件の図面をまとめることが多かったですが、いまは、みんなで協力しながら図面を描いています。「孤独」もいくばくか、和らいできた気がします。

 建築をつくる過程を“旅”に例えるならば、図面はさながら“地図”に例えられるでしょうか。頼りになる地図(図面)を描くために、これからも技術と感性を磨いていきたいと思います。

上野耕市