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わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2024.10.12

木の「住まい」と木の「施設」を同じ想いで設計する ~2016年のきっかけ~

関西でも秋らしく過ごしやすい季節になりました。今週末は3連休。つかの間の“秋”を楽しみたいと思う今日この頃ですが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。

今回のMs日記は上野が担当いたします。

今回は、近年力を入れている、木の「施設」の設計について書いてみようと思います。ちょうど、広報担当の村上洋子さんに、Msウェブサイトの作品紹介ページの分類を見直してもらい、「木造施設」という新しいカテゴリーができたところです。

ぜひ、ご覧いただければと思います。↓

https://ms-a.com/work_other/

木の住まいと、木の施設。

あまり大きな違いはないのでは?と思われる方も多いかもしれませんが、プロの世界では、思いのほか大きな違いがあり、ひと昔前までは、設計者も施工者もくっきり分かれてしまうほどの隔たりがありました。

 わたし自身、約12年前の2012年、「木造の世界に飛び込んでみようと」はじめて考えたとき、大げさにいえば「崖から飛び降りる」ような勇気が必要でしたし、当時は、木造といえば「住宅」が中心であったように思います。 Msに入社して5年目以降、自然な流れのなかで、施設建築を担当させて頂くことが多くなりました。いまは、木の「施設」を木の「すまい」と区別することなく、丁寧に設計していくことを一つの大きなテーマにしています。

 少し昔を振り返ってみると、2016年にひとつの転機となった作品=『りぼんデイサービス』との出会いがありました。

『りぼんデイサービス』は、三澤康彦さんの設計で、吹田市の住宅地のなかに新築された木造2階建ての施設です。外観は、ほぼ平屋にみえます。「通所看護(デイサービス)」という用途上、地域の皆さまを乗せた車の出入りが多く、庇を大きくだした「車寄せ」がファサードをつくっています。

はじめて訪れたとき、明るく開放的で、木の端正なデザインと優しい風合いが合わさったような空間に感動したことをよく覚えています。竣工後、たくさんの見学会や研修会があり、三澤さんから直接話を聞く機会が多くありました。

上写真は、同じアングルでみた「建て方」の際の工事写真です。一番のポイントは、Msが培ってきた、木の「住まい」の設計手法が、そのまま木の「施設」へ展開されていることです。

構造材は、大阪府産材(河内長野市)の杉です。

あえて「並材(なみざい)」でつくることをテーマに取り組んだとお聞きし、“料理(設計)の腕次第で、建築に力を与えられる”ことを学びました。

三澤さんといえば「Jパネル(いまでは、JAS認定品にもなっています)」ですが、Jパネルの材料(ラミナ)も、大阪府から製作工場のある鳥取県(当時:レングス)まで送り、製作するという力の入れようでした。

構造や温熱環境といった性能も高く、OMソーラーによる室内空気のへの配慮もあり、この場所で働く職員の皆さまにもとても好評でした。

2017年の5月に三澤康彦さんが急逝されたことで、最後から2番目の作品となりましたが、Msが取り組む、木の「施設」の特徴がよく現れています。地域に溶け込み、地域の皆さまに必要な施設として使われ続けています。

さて。少し話がそれますが、上のスケッチは、「りぼんデイサービス」の仕事から約1年後の2017年の3月頃だったと思いますが、三澤康彦さんから最後にいただいたものです。

ある工務店さんからの依頼で、「有料老人ホーム」を木造でつくる構想がありました。残念ながら、この計画はうまく進みませんでしたが、その時点で、自分の力の無さを感じつつ、いつか木の施設を設計していきたいと想いを持たせてくれたきっかけとなりました。

 Msでは、木の「住まい」と同じ想いで、木の「施設」を設計しています。

今後の展開に、ぜひご期待ください。

 上野耕市