なだらかな傾斜地にたつ平屋の住宅です。都市部で永く生活をされていたご夫妻が、この地に永住しようと土地を求めました。「遠く南に富士山が見える。」ということがこの土地選びのポイントだったこと、富士山の麓に育った私にはうれしいお話でした。
2015年竣工の北杜の家は、長野県箕輪町の北沢建築さんの施工です。現場監理は大阪から車で通いました。途中、箕輪町にある北沢建築さん横の胡桃山荘に宿泊して、現場に向かいました。担当は佐治あゆみさん。(現在中島あゆみさんです。)
南外観。富士山を眺めることを意図したデッキです。
緩勾配の切妻屋根ですが、独特な屋根形状に見えます。
西側の前面道路から見る外観です。
屋根のけらばの出が一律でないために、空から見たら斜めラインが多い屋根形状です。屋根には塔屋があり、半坪程度の物見台と、「そよかぜ集熱パネル」用の三角台が見えます。
外壁は、薄黄蘗(うすきはだ)色の左官壁と、板金と木部塗装の焦茶色がレトロな感じに見えて、とても気に入っています。
北からの外観です。軒高が低く抑えられていて、これも気に入っています。
写真右手の玄関アプローチと駐車スペースに間に見える左官壁は、3畳くらいの物置の壁。物置は離れになっていますが、大屋根の中に入っています。
書斎には、物見台に登る急な階段があります。1坪の塔屋は半分が吹き抜けているので、Jパネルの手すりを丸く刳り抜くと、下からも空が見えます。
寝室には 書斎につながる「室内窓」があります。戸襖を引けば、寝室から書斎を介して外の景色が見えます。
キッチンは家の中心にあります。
シンクの前に立つとカウンター越に富士山が見える。という想定です。L字型の調理台とシンクはステンレス一体型。中央のキッチンテーブルはチークパネルでパーティーシンクが付いています。
キッチンの横には休憩用のベンチソファー。私自身も愛用のベンチソファーは「あると幸せ」というものになっています。
このベンチソファーの背面は台所から使う食器棚、並びには家事テーブルが見えます。南のリビングに向いた白い左官壁には、小さなニッチがあります。
南のテラス窓から内部を見ます。屋根の形に沿った天井に見える垂木とJパネルの杉野地板。棟木を支えるのは径180の栗八角柱で、見えがかり長さは3210㎜です。
景色を家の中に取り込むようにと窓の取り方を工夫しました。寒い地域ですが、しっかり断熱をしたうえで薪ストーブを使って、またこの冬も楽しんで住まわれていることと思います。
冬に向かって、富士山も見えやすくなると思います。
三澤文子