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わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2026.03.29

【蔵出し!自慢の改修住宅作品】~「はすそら鍼癒院」(2011)

京都市上京区の北山にお住まいのMさんからご相談を受けたのが2009年。鍼灸師として活躍しておられたMさんが満を持して独立されることになり、お母様とお住まいのご自宅を改修することになりました。お住まいは、駅からも近く北山らしい閑静な住宅地の中に建つ、レトロな雰囲気の素敵な建物でした。建物は外壁と同系色の左官塗りの塀で囲まれていて、建物と塀との間に大きな樹木が窮屈に葉っぱを茂らせていました。鍼癒院にするならば、駅近とはいうものの駐車スペースは必要だということで、塀を取り除き、すっきりと、レトロな建物の姿を見せることにしました。

建設年は1926年、昭和4年です。建物は、いわば「大正ロマン家屋」。つまり日本の伝統的な木造建築に陸屋根やステンドグラス、そしてモダンな建具デザインなど、西洋の要素を取り入れた和洋折衷スタイルの家屋でした。陸屋根の玄関と陸屋根が続く右手の窓が見える部屋は、たいてい洋間の応接室がつくられるものですが、この住宅は4帖半のかわいい和室でした。洋間は玄関の、向かって左の格子窓がある部分で、ここが応接室でした。

今回の改修では、玄関の手前脇に設けた看板を兼ねた外灯と、スチールの手すり以外は既存のままです。ダークブラウンで塗られた欄間や建具のデザインなど、レトロな雰囲気であり、そしてとてもシックなのです。

玄関内部です。窓枠や下駄箱もそのままで、漆喰の白壁にダークブラウンの木枠がキリッと空間を引き締めています。

玄関室から右手方向の内部を見ています。お医者様であったお父様がかつて使用されていたガラスの白い収納棚はMさんがどうしても使いたいと大切に保管しておいたものでした。その収納棚の向こうが待合室になります。

もともと4帖半の和室だった玄関横の空間を待合室に。患者さんへの問診をとても大切にするMさん。患者さんお一人がベンチソファーに座られ、Mさんは手前の小さな椅子に座り、丁寧に時間をかけて聞き取りをされます。

待合室のベンチソファーから施術室の方向を見ています。白いガラスの収納棚のすぐ横に背の高いダークブラウンの建具が見えますが、その建具の奥はプライベート空間になっています。1階はお母様の寝室やLDK、そして水回り。2階はMさんのプライベートスペースになっています。

施術室の前室です。右手2室が施術室になります。「外観も内観も現状のデザインをそのままにしてほしい。」というMさんのご希望でした。もちろん私も大賛成でしたが、鍼癒院内部の温熱性能が向上しないことがとても心配でした。一方、鍼癒院の奥にあるお住まいは断熱を施して温熱性能を上げ、同時に建物全体の耐震性能も向上させました。

2室が並ぶ施術室の内部を見ています。Mさんがしつらえた施術台があります。それぞれ小さく仕切られ閉じて使われるので、エアコンで暖かさが保たれているとのことです。

耐震診断では評点が0.09でしたが、耐震改修により評点は1.02まで向上させています。雨漏りがあり下地が著しく腐朽していた陸屋根の下地も取り替えて、しっかりとした防水工事も行なっています。改修によって延命して今年は97歳のこの建物。まだまだ現役で、沢山の方々に癒やしと、健やかさを届けていくことでしょう。

(三澤文子)