名栗加工現場
つい先日、名栗加工現場を見学させていただく機会があり、大阪市内にある橘商店さんに行ってきました。Msでも定番の名栗加工、大阪でこれができるのは唯一橘商店さんだけです。その名栗加工を実演していただいたのは、名栗加工歴30年の橘さんです。ちなみに「名栗(なぐり)」とは、角材や板に「突き鑿(ノミ)」や「ちょうな」などの道具で独特の削り痕を残す日本古来からの加工技術のことです。
ピーラー(米松)を「突きノミ名栗」している様子。これは名栗の中でも基本となり、一方向に突いた柄を「一方突き」、これらをいくつか組み合わせたものを「矢型」と言います。基本的に柾目は加工できますが、板目は加工が難しいとのこと。理由は同方向に名栗加工を施していくと板目は途中で目の方向が変わってしまい一定方向に加工をするのが難しくなってしまうからです。無理やり加工を施したものは表面が荒く、ガサガサになってしまっていました。やはり大切なのは木の性質に従い、そして逆らわないことです。
こちらは六角に製材した栗に名栗加工「六角名栗」を施している様子。木の中でも栗は灰汁(あく)が非常に出やすい材種なので加工後灰汁抜きを行います。
六角名栗を施したものに、さらに漆塗りを行ったものがこちら。材の良さが一段と増してどれも味わい深いです。「色ムラを敢えて付けたりすると良さが際立つ!」と橘さん。橘商店さんでは名栗加工の大半に栗を使っています。
まさに名栗加工、そして職人の命ともいうべき道具たちです。「突き鑿(ノミ)」の寿命は40年。もちろん加工種類によって使い分けもありますが、長年加工をしているうちに刃が徐々に削れて短くなっているのがお分かりでしょうか(右写真)。1日で40本程度の加工をされるそうですが、相当な力が必要な仕事なのに40本も…職人技です。
最後に、こちらを訪れた際に魅力的なベンチを発見。世界に一つだけの名栗ベンチです。職人さんの手間暇かけた唯一無二のモノに腰掛け休憩する方の姿が目に浮かびます。木材なだけに手触りが良く、感触も楽しめ、座り心地もとても良かったです。
大きさは違えど、Msも住まい手さんに唯一無二なモノ(すまい)を今後もつくり続けていきたいと思います。
スタッフ 中根