漆塗り実習に行ってきました
11月の18日、19日と2日間に渡り、岐阜県美濃市にある森林文化アカデミーを訪れました。
Ms、MSDは毎年のこの時期にアカデミーの漆塗り実習に参加します。
講師は沢幸漆店の沢田欣也さん。多くの設計案件でもお世話になっている方です。
先ずは座学から。アカデミーの生徒さんと一緒に漆についての理解を深めていきます。
続いて、漆塗りの生活道具を手に取りながら、塗りの技法や表現の多様さを学びます。
塗りの方法は大きく分けて2種類。
ぽってりと表面に乗せる様に塗る「造膜」と、表面に塗り込む「含浸」があります。
木以外に鉄に塗ることも多く、錆止めの効果もあるとのこと。
表情の豊かさに見とれてしまいます。
写真は名栗を施した六角形の大黒柱と、矢羽名栗を施した付梁。
Ms、MSDの設計案件に納まる材です。これに加え、サワラの本実板、廻り縁を持参しています。
実際に使う材を実習教材として提供することで、アカデミーの学生さん達の経験値になり、
住まい手さんには塗装時のエピソードを交えてお話することで、より愛着をもって貰えるのではないかと思います。
運搬の手配など、時間・労力は掛かりますが、それ以上に繋がりが広がること、
住まい手さんに喜んで頂けることには大きな喜びがあります。
漆塗りの前に、べんがらに柿渋を加えたもので着色をしていきます。綺麗な朱色です。
大黒柱への着色。慎重に塗り進めて行きます。
続いて漆塗りです。生漆の色は琥珀色。ほんのり甘い香りが漂います。
この日のお天気は雨でしたが、漆塗りには良い環境。漆は適度な温・湿度でないと乾きません。
漆が硬化するには温度が24℃~28℃、湿度が70~85%程が良いとされています。
材全般のべんがら着色と、柱・付梁に漆を1回塗りしたところで、1日目の実習が終了。
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その後、アカデミーの生徒さん達が、夕食を振舞ってくださいました。
講師の方々、生徒さん、Ms、MSDメンバーの総勢15名でテーブルを囲み、
ご当地の食材やお酒を楽しみながら、建築やものづくりの話に熱が入ります。
気付けば、日を跨いで25:00!皆さんタフです。(笑)
明日はひたすら漆塗りに向き合います。
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2日目の実習。Ms三澤の帽子が、シンボルカラーの赤に変わっています。気合い十分です!
漆の塗膜越しにも木目がしっかりと見える様に、「拭き漆」という技法をとっています。
漆を塗り付けた後を追いかけながら、余分な漆を拭き取っていく方法です。
拭き残しが無い様に入念に拭いていきます。
塗り終えた材は、湿潤状態を保った室(ムロ)にいれ、乾かしていきます。
生徒さんの作品も仕上がってきました。
思わず手に取りたくなりますが、乾くまではぐっと我慢です。
↑大黒柱:3回塗り
↑付梁:3回塗り ↑サワラ本実板:2回塗り
大黒柱、付梁は3回塗り、サワラ本実板は2回塗りです。
「節の目立つ材も漆を塗ることにより、格のある姿に様変わりする」とはMSD三澤文子の談。
漆の光沢、弁柄色、木目が相まって、とても美しいです。
これで2日間の実習が終了です。
材はこのまま乾かし、後日引き上げることになります。
MSDスタッフIがひそかに忍ばせた、お箸の出来上がりも楽しみです。
追記
アカデミーの先生方、生徒さん達には本当にお世話になりました。
貴重な時間を共有できたことに感謝しております。
久津輪先生の撮影された写真がとても綺麗で、勝手ながらこの日記にもたくさん使わせていただきました。
重ねてお礼申し上げます。
スタッフ:池田