NEXT21「風香る舎」のご紹介 ~いつか飛びたいと思う鳥のオブジェのこと
2018年からスタートした大阪ガスNEXT21の改修プロジェクト、 Msは503住戸の改修設計をさせて頂きました。
そして、この3月末に完成、4月から2か月間公開見学のはずが、全て中止になりましたが、数日前に、大阪ガスのサイトに情報がアップされました。インテリアの動画もありますので、どうかご覧くださいませ。
https://www.osakagas.co.jp/company/efforts/next21/home/home6.html
そんなことで、竣工写真も、晴れてご紹介できることとなりました。
「風香る舎(かぜかおるや)」のリビングです。
左手にキッチンが見えますが、「センターキッチン」と名付けた、真ん中にキッチン、そのキッチンを囲んで家族の居場所があるというプラン構成です。
右手には、共用廊下に沿った土間空間が見えます。その土間にある障子も開ければ、風が南北と通り抜けます。
集合住宅では実現できない「風通しのよい家のつくり」になっているのです。
また、梁組の見えるのも、集合住宅らしからぬ空間。たっぷりの無垢の木に囲まれています。すなわち「木の香りのする家のつくり」です。
リビングからキッチンを介して、北のベランダの方向を見ています。
「ほっこりと」くつろげる DEN(鳥の巣のように籠る空間)スペースが、右手奥に見えます。
左手奥は、キッチンテーブルのある茶の間です。
これは、リビングのすぐ脇にある、手洗いスペース。
2018年の計画提案当時 日々の健康のためには「手洗い慣行」が必要と、このプラン構成を提案しました。
そもそも、浴室の横にある洗面台というステレオタイプにかねてから疑問を持っていて、出来るだけ、リビングに近い位置に洗面台(手洗いスペース)を設けるように提案していました。
それらは、「冬のインフルエンザ予防は『手洗い慣行』が第一。」という主旨からでしたが、よもや、新型コロナウィルス対応の「手洗いコーナー」になるとは、思いもよらないことでした。
ここが玄関土間です。
右手の格子戸が、玄関戸で、もう一枚の網戸付きの障子がその横に見えます。 間口が広い住戸なので、奥行きも深く、奥の突き当りは収納スペース。
天井は赤味の杉板で、設備吹き出し口も全て杉の繊細なルーバーです。
玄関土間を見返します。
右手、障子風建具が連なっていますが、全て開ければ、風が気持ちよく通ります。
つまり、「風通りの良い家のつくり」というのは、「かつての日本の木造住宅のつくり」なのですね。
左手に見える障子とサッシの外は、共用通路。障子の前の棚板には、鳥のオブジェが並んでいます。これは、「風香る舎」のコンセプトイメージ「鳥」を、Msにてインテリアの提案をして、オブジェも選定し展示いたしました。
「鳥は実を運び、木に生命を与え、森を豊かにする。」という 木の家つくりのメッセージをこの鳥のオブジェに込めました。
そんな、鳥たちの中で、この作品は、韓国の陶芸家 キム・ミョンレさんの作品 「青い鳥と葉の小作」です。
昨年2019年3月、韓国ソウルの、彼女の、ショップ+工房である「自然共感陶」にて手に入れたもの。その時、工房で、キム・ミョンレさんに「どのような想いを、鳥のモチーフの作品に込めているのですか?」と問いかけました。 その問いに「私の母の世代、韓国では、未だ女性は、自由にやりたいことが出来る時代ではなかった。母は、鳥を見ると、いつも『あの鳥のように自由にどこにでも行ってみたい。』と言っていました。その母の想いを作品に込めています。」と、答えられました。
どこか、せつなく見える、この鳥、
世界がコロナに翻弄されているこの2か月間、「きっといつかは自由に飛べる。」と思いつつ、じっと、この「風香る舎」のなかで、籠っていたのでしょうか。
(三澤文子)