エムズ日記をご覧のみなさま、こんにちは。
ようやく事務所のエアコンを使わない季節になりました。窓を開けて風を通していますが、今年は蜂が少なく穏やかに日々を過ごしております。
さて、今週のMs日記は髙田が担当いたします。
6月より私が担当しておりました京都O邸のメンテナンス工事について書きたいと思います。
O邸は2005年に竣工したMs設計、宮内建築さん施工の物件です。
間口が狭く奥行きの深い敷地に、普通車と小型車が縦列で駐車可能なスペースを持ち合わせています。文字を読むと窮屈に感じるかもしれませんが、およそ半間幅の通り土間が、北側和室に面した坪庭まで抜けており、非常に開放的です。
玄関は通り土間の左手にあり、京都らしいすてきなアプローチとなっています。
木造住宅であれば、どうしても壁が必要となり車の横をすり抜けていくようなアプローチになってしまいがちですが、「ラーメン構造」とすることでこれを実現しています。120×300の偏平柱にDボルト2本を用いて上下をそれぞれ基礎、胴差と緊結させているのです。当時ではかなり珍しい製材によるラーメン構造です。
そして20年経った今年、メンテナンス工事を実施しました。新築時と同じく、宮内建築のみなさんが行ってくれました。写真は大工の宮内寿和親方です。
最も大掛かりな工事となったのは、ロフトバルコニーです。デッキ材が腐食していたので取り替えました。
さらに、「文子さんと宮内さんにつくっていただいた立派な家をなるべく綺麗に保ちたい」という住まい手さんの想いを受け、デッキに屋根を新設しました。
住まいを大切に扱ってくれて本当にうれしく思います。
3畳ほどの大きいバルコニーなので、屋根が設置されるとずいぶんと落ち着いた空間になりました。
写真右手に見える格子柵も作り直したものです。ここはあえて塗装せずに素木のままにしています。経年変化によって黒っぽくなると落ち着いた色合いになり、塗装とはまた違った魅力が出るのです。
また、周りに高い建物が少ないのでデッキからの眺めはよく、京都五山の送り火が見えるそうです。
自宅のバルコニーから眺められるなんて、うらやましい限りです。
リビングのフローリングとテーブルは、表面が荒くなっていたので研磨してもらいました。
研磨作業はものすごい木くずが舞うので、リビング全面を養生し、顔を保護しながら行います。休憩も一苦労です。その甲斐あってとてもきれいな表情に仕上がりました。宮内建築のみなさん、ありがとうございました。
また、門扉の塗装もやり直しました。対候性の強い塗料であっても、20年も経てば雨が当たるところは変色するものです。雨のあたり具体によって変色具合も違うので、定期的に塗りなおすときれいに見えます。
色は建物の雰囲気に合わせて ”黒っぽい茶色” を選んだのですが、Msがいつも使用している塗料はかなり黒味の強い茶色なので住まい手さんにサンプルをお送りして確認しました。
サンプルをみるのと、実際に門扉全面が塗装されたものを見るのとでは、かなり感じ方も違うものですが、落ち着いた色合いに仕上り、住まい手さんにも喜んでいただけました。
私にとって初めてのメンテナンス工事でしたが、「住まいの手入れをすることの大切さ」を体感する貴重な機会となりました。
今後も様々な住まいのメンテナンスに関わっていき、お手入れさせていただければと思います。
髙田颯斗