今年3月に竣工した埼玉県の2世帯住宅、設計は2023年の7月から始まりました。依頼者のKさんは、すでに建ててもらいたい大工さんが決まっていて、その大工の親方、久道さんと依頼者Kさんは数年前から交流を重ねていたとのことでした。お話では、久道さんの自邸や建てた店舗などを見せてもらって、すっかり大工の腕前や木をふんだんに使った家づくりに感銘を受けていたようでした。そんな久道さんを私一人で埼玉県のときがわ町を訪ねた日、数時間ですっかり意気投合し力強いチームができた思いでKさんご家族の家づくりが始まったのです。

敷地は北に公道、東に私道がある角地で、写真は東の私道から見た外観です。道路から40㎝ほど段差がある敷地を北東の角からスロープで上がってきて、2世帯の玄関の前に。写真右手が子世帯、そして少し上がって親世帯の玄関が見えます。

スロープで上がってきた玄関ポーチ。親世帯の玄関引き戸は格子網戸付きです。植栽は、高木は植木屋さんが植樹しましたが、下草はKさんが植え込みされました。この家の名前にあるようにKさんは植物が格別にお好きだからです。

南のお庭には鉢植えの山野草がびっしり並んでいます。お手製の棚もできていました。奥様に聞くところによると休みの日は、ほぼ一日中植物の世話をしているとのことです。

ここは親世帯の玄関ですが、写真右手の玄関飾り棚に置かれているのは「マユカケオモト」上品なうすピンクのお花が素敵です。
建築の仕上げは、床はタモの名栗仕上げのうえ漆塗り。正面奥に見える階段の手前には出入り口があり、写真は引き戸があいたところ。子世帯の玄関につながります。

1階の親世帯のすまい。240㎜径の栗の八角柱が見えますが、梁と柱の仕口は久道さんが譲れない木組みの型です。
そしてダイニングからは南の庭が見えます。山野草の鉢が並ぶ棚がよく見えます。

1階の浴室は在来工法で床、腰壁は十和田石貼り、壁と天井はヒバ材です。毎日入浴の後はKさんが壁の水滴を拭いてくださるとか。本当につくりがいがあるお手入れで頭が下がります。

2階子世帯の住まいは小屋組が見えるおおらかな空間です。キッチンからリビングそして奥の寝室まで見通しています。
リビング南前はベランダですが、屋根の軒が1500㎜伸びているので、まるで室内が連続しているようです。

リビングからキッチンの見返しです。キッチンの調理台につながるテーブルは長さ1800㎜。ベンチは久通さんからの竣工プレゼントで、なんと座面は名栗仕上げです。
写真左手奥の出入り口から階段で玄関に向かうのですが、この出入り口の建具は三澤康彦デザインの李朝風格子。子世帯ご夫妻が、Msのウェブサイトで見たこの建具を気に入ってくれてご夫妻から希望していただきました。

子世帯の玄関室です。奥の収納スペースから階段を通して親世帯の玄関まで見通しています。子世帯の吹き抜けの玄関室と親世帯の落ち着いた玄関室が対照的であり、それぞれの良さが引き立てあっていると思います。

北の公道から見た外観です。写真左端からスロープで2世帯の玄関へ。右手間前の黒塀の中を歩いて勝手口に向かいます。下屋の屋根が深く出ている下はカーポート。

深い下屋をつくるために桁を支える頬杖材をもうけました。ちょうどこの下は2台分の自転車置き場です。
2世帯の暮らしを支える住まい。久道さんの大工の仕事が際立ちました。また大切にお手入れしてくださる住まい手のKさんたちご家族が、永く住まいできる家に育ててくれることと思っています。
三澤文子 撮影:畑拓



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