MOKスクール:秋の岐阜ツアー(1日目)
紅葉の美しい11月下旬。MOKスクール秋のツアーで岐阜県を訪れました。
岐阜県というと東濃地域のヒノキを思い浮かべる方も多いかと思いますが、今回はスギの名産地である中濃地域:長良川流域への旅です。
総勢28名。製材所から最新木造建築まで幅広い取り組みを見て回りました。
初めに訪れたのは可児市にある(株)小林三之助商店です。創業明治41年の老舗中の老舗です。
ここでは創業以来、鉄道用の枕木(まくらぎ)が主力製品です。コンクリート製に置き替える同業他社が多い中、木材にこだわり続けて100余年。今では全国シェア7割を占めるに至っています。
上写真:足元の黒い材が枕木(まくらぎ)です。
ご説明頂いた大野さん(写真中央)によると、生産量はピーク時に比べると減少しているが、今でも年間約20万本!がつくられているとのこと。ものすごい量です。
木口割れを防ぐためのリング打ち、薬剤を注入するためのインサイジング(刺傷)加工など、普段聞くことの出来ない貴重なお話を頂きました。
左写真が「雑(ざつ)」と呼ばれる枕木用の広葉樹です。
ケンパスと呼ばれる南洋材が多いそうですが実に多種多様な樹種が用いられています。広葉樹のなかでも貴重な「栗」は別格とのこと。右写真のように分けて管理されています。
Msがいつも発注しているのはこの栗材をフローリング加工したもの。
針葉樹と異なり、栗は「一本もの」の長い材をとるのが非常に難しいため、欠点箇所をカットし短尺にしてフローリングを製作することが多いです。(※「ユニ」と呼ばれています)
小林三之助商店では、この他にも木製パレットや木製杭までも作成。残材は隣地にある大手製紙工場に持ち込まれます。環境の時代にふさわしい循環型システムが構築されていました。
続いて訪れたのは美濃市にある「岐阜県立森林文化アカデミー」。全国でも珍しい林業から木造建築までを学べる公立の専修学校です。
説明を頂いたのは、木造建築講座で材料を専門に教鞭をとる吉野先生。この学校にしかない、実践的な教育プログラムにみんな興味津々です。
その中でも目を引いたのが学生自らが設計から施工までを行う「自力建設」。上写真はその建設現場です。意欲あふれる造形にみんなの話も弾みます。
施設群も見どころ満載です。
左は構造設計者:稲山正弘氏による「森の情報センター」。丸太の架構が圧巻です。右は「オープンラボ(公開試験場)」。地域に開かれた試験場で、Msを含め県外からも多数の企業が実物大試験を依頼しています。
まだまだ大学で木造建築を学ぶ場が少ない中、森林文化アカデミーの取組はまさに先駆的かつ実践的。地域にも開かれています。
社会人入学者が多いのも特徴で、ツアー参加者の中には「今すぐにでも入学したい!」との声も聞かれるほどでした。
次は長良川をさらに上流へ。
郡上市に位置する「白鳥林工協業組合」の見学です。主力製品は長良杉パネル」です。
上写真は、パネルになる前の長良杉の挽き板です。
巾は10センチ内外で集成材より広く、無垢材に近い風合いがあります。
戦後の拡大造林で植えられた50~60年生の杉、そのなかでも直径26センチ程度の丸太(中目材)が良く用いられているとのこと。
これらの材を、木表(きおもて)・木裏(きうら)を交互に、かつ、色目や反り・節の有無などを見極めながら配置するには熟練の技術が求められます。
職人さんがまさに一枚一枚吟味し、手仕事に近いかたちでパネルがつくられていきます。
10年程前までは、真冬の豪雪時にも出来る「屋内作業」としての意味合いがあったとのことですが、現在は注文が増え、一年中対応するために専門の部署が出来ています。
Msでは一軒の住宅にこの長良杉パネルを30~40枚使用します。本棚、カウンター、間仕切り壁から家具まで用途は様々。「現代の木の住まい」にぴったりの製品です。
美谷添社長、石ヶ谷様はじめ白鳥林工の皆様、ありがとうございました!
長かった一日が終わり、宿へ。宿は岐阜市の「十八楼(じゅうはちろう)」。
これまでのMOKスクールツアーのなかでも最上級の温泉宿です。
宴会では、美濃市で古民家を活用した地域おこしを行う「一般社団法人インク」の中島明之氏が活動を報告してくれました。設計業務の枠にとどまらず地域の中に自ら飛び込んでいく中島氏の姿勢に賛辞が送られました。
駆け足で各地を見て回った一日目。温泉と長良川のせせらぎで旅の疲れを癒します。
二日目は、岐阜市内の名所やMs・MSDの実作、最新の木造建築を見て回ります。詳細は、後日改めてレポートしたいと思います。
スタッフ:上野