川原町の「町屋生活」を考える会 及び 川原町・小さな町家改修の試み展 に行ってきました
8月27日(土)に川原町の「町屋生活」を考える会 及び 川原町・小さな町家改修の試み展 に行ってきました。(主催:住宅医ネットワーク)
この川原町とは岐阜県長良橋南詰の鵜飼観覧船のりばから西へ続く、下記写真のような格子戸を持つ日本家屋が軒を連ねる「湊町・玉井町・元浜町」のことを指します。とても風情で趣があり魅力的な町並みではないでしょうか。しかし、川原町の現実そして、岐阜県内の直面している現実は、単に古い建物は残そうというほど、単純なものではなく、町並み、構造、温熱環境、費用など様々な問題が複合的に絡んでいるようです。このことは、現在の日本が直面している新築と改修に関わる問題にもあてはまるのではないでしょうか
「川原町の「町屋生活」を考える会」では3つのレクチャーが行なわれ、その後、ディスカッションとなりました。40~50名の方が聴講しに来られ、新聞社の取材もきていたので、それだけ川原町そして岐阜県が直面している問題に関心が高まっていると思いました。
3つのレクチャーとも町屋に関係した内容となりました。
・MOK-MSD代表の三澤文子氏による木造病理学による改修事例を基に住宅医の必要性について
・自立循環型住宅研究/有建築設計舎代表 坂崎 有祐氏による町屋における温熱環境を中心とした、改修事例について
・NPO法人 WOOD AC代表理事/TE-DOC代表 河本 和義氏による町屋の耐震について
レクチャー後には、聴講者、レクチャー講師3名によるディスカッションが行なわれました。岐阜県立森林文化アカデミー准教授の久津輪先生がコーディネータです。
川原町に住んでいる聴講者からの本音として、
「誰を信用してよいのか、何を信用してよいのか」、 「明確な基準、判断材料は」
「かかるコスト、新築との違いは」、 「古いものを残すだけでなく、住みよい町にしたい」
など、考えさせられることがたくさんありました。住まい手や家主にしてみれば当然のことだと感じました。だからこそ、住宅医の必要性が急務なのではと感じました。
講演後は場所を移して、川原町・小さな町家改修の試み展が始まりました。京都造形芸術大学大学院建築デザインの三澤文子スタジオの学生が、工芸家夫妻のための家として川原町にある小さな町屋(借家)の改修計画・設計を試みた内容の模型、展示用パネルを展示しております。さらに、住宅医ネットワークの改修物件のパネルも合わせて展示しております。こちらにも本当にたくさんの方が見に来られていました。
川原町の町屋だけでなく、岐阜県内、そして日本国内の住宅について考えさせられる、本当に内容の濃い一日を過ごすことができました。当日、関わった方全員が、川原町を、岐阜県をより良い方向に進んでいけるようにと考えていることが伝わってきました。
そして、2日後の8月29日に住宅医ネットワークが提案する「既存ドックシステム3」が平成23年度長期優良住宅先導事業に採択されました。このことは国レベルにおいて木造住宅の改修に重きを置いており、さらに、住宅医ネットワークがそれを進めていこうとする後押しになると思われます。これらのこと全てが少しずつではあるかもしれませんが、今回の初めの一歩が大きな一歩へと、そして日本全国に広がっていくような気がしました。