Y邸手刻み! 沖本さんと大工仲間たち
9月も中旬に入り、秋らしく過ごしやすい季節となってきました。
9月17日の祝日。
Y邸手刻み打合せのため、沖本さんの加工場(京都・京北)を訪ねました。
「京北(けいほく)」は、現在は、京都市右京区の一部ですが、
北山杉の磨丸太の林産地として有名で、美しい里山の風景が広がります。
『Ms事務所(吹田市)から2時間半程かかるのでは?』と心配して、朝早く出発しましたが、
京都縦貫自動車道を使うと、実際は1時間30分!
あっという間に到着しました。
到着してみると、すでに大工さんが材を広げて、手刻み仕事の真っ最中!
沖本さんの仕事を理解する、兵庫県・明石の大工さんチームです。
刻んでいるのは土台のヒノキ材です。
一本一本、ノミやカンナを巧みに使い、手仕事で材を刻んでいく姿に、思わず時間を忘れて見入ってしまいます。
【上写真 奥:伊東さん、手前:竹下さん】
土台の継手は、「鎌継ぎ(かまつぎ)」です。
上写真の左右の材が、ピッタリと接合するよう加工されています。
よく見ると、細部まで工夫されたディテールになっており、大工さんの知恵と技術が詰まっています。
今回の計画では、土台も「化粧」材として、室内に見える箇所があります。
Jパネルの壁が入るスリットや、柱の仕口など、とても綺麗な仕事です。
【上写真:井澤さん】
活気のある加工場の一角で、図面を元に、沖本さんと打合せを行います。
直接材をみて、触れて、話すことで、アイデアがたくさん生まれてきます。
上写真をご覧ください。
土台の中央部に、材を「貫通」するように穴があいています。(柱のホゾ穴です)
通常のプレカットでは、材を貫通させずに、ホゾ穴を掘ることが一般的ですが、
今回は特別に、土台のめり込みを防止して、基礎へ直接力を伝達させるために、あえて貫通させる納まりとしています。手刻みだからこそ、可能になった納まりです。
上写真は、ポーチ部:梁の「金輪継ぎ(かなわつぎ)」です。
横方向にスライドして、6メートルの材同士が接合されます。沖本大工のピカイチ仕事です!
「金輪継ぎ(かなわつぎ)」を仮組して頂きました。
チークの込栓(こみせん)を”コン・コン”と打ち込むと、材が寄せ合うようにピッタリと繋がります。
お昼は、京北の「地鶏バーベキュー」です。
写真中央:『おにいちゃん』の愛称で慕われる、下西ノ園さんがバーベキュー担当です。
なんと、沖本さんがこの日のために、一か月前から予約をして下さったほどの腕前です。
仕事中のため、”ノンアルコールビール”で乾杯です!
会話の中で、『現在は、手刻みによる繊細な木の仕事が少なく、今回の仕事は”粋”に感じている』
と嬉しいお話を頂きました。
今回は、沖本さんの大工さんチームに加え、MOKスクール生である小坂さん、
大阪で唯一の刃物専門店:「のぼり刃物店(茨木市)」林さんにも参加を頂きました。
「のぼり刃物店」さんは、大阪の大工さんが集まる名店で、道具のメンテナンスの際、
リラックスして情報交換できる”サロン”のような憩の場となっているとのこと。
ぜひ、訪れてみたいお店です。
また、この日は全員で、京北で木工を営む『山の家具工房』田路さんのお店を訪れました。
田路さんは、沖本さんの友人で、無垢材を使って非常にセンスの良い家具づくりをされており、大工さん達も夢中になって見学しています。
中でも注目を集めたのが、上写真:クリのサイドボードです。
扉が「蛇腹(じゃばら)」になっており、全面がオープンに開く仕組みとなっています。
盛りだくさんの内容となりましたが、
まだまだ伝えられないほど、木の”手仕事”は奥深いもの。
派手さはなくとも、『正直で丁寧な手仕事』に触れ、充実した一日となりました。
10月中旬の建て方も、今回の沖本さん大工チームで実施して頂く予定です。
皆さまのご協力に改めて感謝致します。Msスタッフ 上野耕市
クリの端材を利用した、コケのアート作品(沖本さん作)