“広島の隠れ里”庄原市の自然豊かな里山に、古民家を改修した宿がオープンしました。
「長者屋(ちょうじゃや)」 @庄原市比和町
「不老仙(ふろうせん)」 @庄原市上谷町
令和元年 9 月 1 日。
2 棟の宿が同時にオープンしましたが、今回は「長者屋(ちょうじゃや)」についてレポートします。
南側からの外観です。
築 200 年を超える入母屋造りの農家の佇まいはそのままに、
地域交流のキーパーソンでもある、奥田工務店/奥田氏により改修工事を行いました。
地域文化を守り、伝えること
『カッコいい宿をつくりたいわけではない(木村洋氏)』
せとうち DMO 古街計画【事業主】のポリシーがよく現れているのが、
上写真の”ヒストリールーム”です。
地元の方言で、”だや(牛小屋)”と呼ばれ、一つ屋根の下で、牛と共に生活してきた空間を、
地域の歴史・文化を発信する場として残しています。
玄関土間からの内観です。
土間の三和土(たたき)も当時のまま。
地元の方々からも、「ぜひ残して欲しい」とのリクエストがありました。
既存柱は「栗」、 梁桁は「地松」、 天井は「煤竹」。
大きな骨格・間取りの変更は行わないかたちで、改修設計を進めました。
共同設計への挑戦
さて、今回は新しい取組みとして、”共同設計”に挑戦したプロジェクトです。
設計統括は、六角屋:三浦史朗氏。
約一年前の 8 月末。
Ms は、当初、既存建物の調査を仕事として依頼され、
住宅医の有志メンバーと共に、長者屋・不老仙・他一棟の計 3 棟の詳細調査を実施しました。
その後、設計チームの一員として、
実施設計から現場監理までを担当させていただくご縁に恵まれました。
上写真は、囲炉裏スペース(掘り炬燵)からみた内観です。
長者屋が持つ”陰影礼賛の世界観”と、
“宿としての快適性”を両立させるために、スケール感・素材感・灯りの配置に注力しました。
黒色の床は、Ms 主催の「漆塗りワークショップ」で製作したものです。
浴室は、思いっきり”広く”、
“非日常感”を味わえる大胆なつくりです。
中央に配置した浴槽は、砥出し仕上げ。
床は、豆砂利洗出し仕上げ。(床下エアコンのダクトを埋設しています)
壁、天井は、桧です。
奥には、シャワーブースがあります。
工事は大変でしたが、
浴室の設計には、六角屋×Ms のチーム力がうまく発揮できたかと思います。
キッチンなど水廻りは、新しく、モダンなイメージで一新しました。
家具は別途工事で、大阪の大工:沖本雅章氏(キサブロウ)に依頼して、
限られた時間のなか、現場で見事に組み上げて頂きました。
※ 8 月お盆の台風が迫った時期でしたので、本当に、ぎりぎりセーフでした。
寝室は、一転して、白色を貴重としたデザインです。
ベッドは、桧を使ったオリジナルデザインで、
爽やかな印象に仕上がっており、非常に好評です。
こちらは、庄原市内のベッドメーカー舛元木工さんに製作して頂きました。
縁側、2 間続きの和室は、建具を修理して土壁を塗り直しました。
ちゃぶ台の製作(沖本氏)、照明器具のセレクトに際しても、”新旧のバランス”に配慮しました。
内の力×外の力
地域の古民家を、宿として再生させること。
今回のプロジェクトを通じて、現実的な厳しい局面がいくつもありましたが、
オープンまで辿り着けたのも、はじまりから最後まで、「人の力」によるものでした。
特に、地元有志メンバーの熱意は高く、物件探しから、宿の運営まで、
庄原の皆さまの「内の力」ありきで、計画自体がスタートしています。
上写真は、土壁ワークショップの様子です。
現場の土を練って、外壁を補修しました。
“足りないものは、「人の力」でカバーする”
9/1 オープンの晩に集まった際、皆が口にしていた言葉です。
私たち「外の力」も、せとうち DMO 古街計画の皆さま、地元の皆さまの熱意に引っ張られるかたちで、
徐々に、力が入っていったように感じています。
現場は、奥田さんの人徳で、
きびしい局面でも、常に、明るく・前向きな雰囲気で包まれていました。
「チームとして、完成を迎えられたこと」
「地元の皆さまに喜んで受け入れていただけたこと」が、何より嬉しいことでした。
“広島の隠れ里”庄原。
歴史と文化、美しい里山風景を楽しむことができる、一棟貸しの古民家の宿です。
ぜひ、一度、訪れてみてください。
Ms 上野耕市
以下、参考 URL
せとうち古民家ステイズ(Setouchi Cominca Stays)
https://cominca-stays.com/
せとうち古民家ステイズ HIROSHIMA【長者屋】予約フォーム
https://shobara-info.com/contents/1947