木津川の家竣工~蔵のある暮らし
昨年10月に着工した木津川の家が竣工しました。
施工はツキデ工務店さん。
この家は住まい手のKさんのご実家に建てた木造2階建ての住まいです。
材は吉野の阪口製材所さんから。
農業を営むご両親の家の離れを建て替え、もともとあった蔵にも手を入れ、住まいの一部に取り込んだ計画です。
手前が延べ面積27坪、2階建ての新築棟(外壁/リシン吹き付け、屋根/ガルバリウム鋼板)。
奥が改修した蔵(2階建/延べ面積11坪)です。
アプローチのしっとりとした植栽はツキデ工務店さんに紹介いただいた庭造り三宅さんのデザイン・施工です。
既存蔵の階段に使われていた御影石など上手に利用しながら、ナナカマドをメインに苔と山野草(ヤマブキ、ツワブキ、ホタルブクロ、ギボウシ、フッキソウetc・・・)をセンス良く配置しています。
明治11年に建てられた農業用の蔵は長年手を入れておらず、荒れ放題。
当初、Kさんのご両親は壊してしまった方がいいのではないかともおっしゃいました。
でもKさん夫妻はこの蔵の雰囲気が好きなのでできれば残したいと。三澤も一目見て味わいあるこの蔵は残す価値がある!と、予算内で改修できる方法を考えました。
壁には穴が開き、床下の大引きは腐っていましたが、幸いにも屋根瓦と柱、梁はそのまま使える状態。
なんとか残す方向でスタートを切れたのでした。
玄関の引分戸を開けると幅6.5m奥行き1.8mの通り土間があります。
広い土間は薪ストーブを置き、サブリビング的な空間です。
李朝風の框戸の奥がリビング。
通り土間から蔵の入口を望んだところ。
通り土間を介して新築棟と蔵を繋ぐプランです。
蔵の中はこんな感じです。
床は42㎜の杉板(1階)、Jパネル(2階)を張り、壁は中塗り仕上げとし予算を抑えています。
中塗り仕上げは基本的には仕上げ塗りの前工程です。
でもこのままで止めておくことも「あり」なのです。
激しくこすれば土がこぼれますが日常の生活では支障ありません。
土の素朴な雰囲気を楽しめますし、今後上塗りをすることも可能です。
柱と梁は既存のままですが、壁を塗り足す分、既存の貫の上から新しく化粧貫を打っています。
柱、梁、化粧貫はMsのスタッフで柿渋を塗りました。
材の耐久性を高めると同時に落ち着いた色味が加わります。
余談ですが、この柿渋、とってもいい臭いがします。。銀杏の臭いを強烈にしたような・・・。
塗装の日うっかりズボンにこぼしてしまい、そのまま電車で帰宅したのですが・・・もしかしたらちょっとしたテロ行為だったのかもしれません(笑)
塗装などで家作りに加わると、勉強になりますし、いろいろな思い出ができるのです。
外壁も中塗り仕上げ(モルタルも配合しています)としましたが、素朴な仕上がりが結果として大成功!
開口部には新しく木製建具を入れています。
框(杉)の見付けはいつもより少し大きめに80㎜。
ぽってりした感じが蔵の雰囲気にちょうどいいです。
網戸もついているので夏は開け放し涼しい風が通り抜けるでしょう。
今回Kさんが蔵を残したいとおっしゃらなければこの空間は実現できなかったかもしれません。
古いものを大事にする気持ちが生んだ空間。壊されなくて本当に良かったです。
新築棟のシーンもご紹介します。
お馴染み。の名栗加工(大阪の橘商店さん)+漆塗り(小松の沢幸漆店さん)の大黒柱です。
今回は吹き抜けに立つ柱なのでなんと5mの長さ!圧倒的な存在感なのです。
材は吉野の坂本林業さんに段取りしていただいた桧材。実は漆をかけるのがもったいないほどきれいな材でした。
2階吹き抜けからLDKを見下ろしたところです。
ダイニングテーブルを兼ねたキッチンカウンターはブラックウォールナット。
幅50cm、厚さ5cmの無垢板を2枚使用しています。
キッチン側の床は一段下げ、テーブルに座る人と目線を合わせます。
キッチンカウンターはステンレス。
写真で分かるでしょうか、仕上げはいつものヘアラインと違いバイブレーション仕上げです。
ヘアラインよりも1.3倍ほど値が張るのですが、マットな光り方が上品でカッコイイ。のです。
自然豊かな土地に立つ新しくて古い家。
今後、のびのびと味わいを増しながら育ってくれる事と思います。
(スタッフ/西久保)