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わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2017.11.11

神戸市S邸新築工事 木材検査~木配り

皆さんは家づくりをする時にまず段取りしなければならない材料は何か知っていますか?ぱっと答えの出る方はおそらく少ないのではないでしょうか。正解は『構造材』です。私たちは、工事契約の数ヶ月前にまず木材契約を交わしていただくことを全ての住まい手にお願いしています。まだ工事契約もしていないのになぜ・・・??そこに疑問を持つことが大切です。

木材契約とは、『良質な木材(構造材)を確保するために、工事契約に先立って木材を発注させてもらいますね』そんな意味になります。もっと端的に分かりやすく言うと、『良質な木材(構造材)を確保するためには、工事契約をしてからでは間に合いません』ということです!

ではなぜ間に合わないのか?そんな疑問を解決させながら、私たちが欠かさず毎物件行っている木材検査~木配りまでの流れをみていきたいと思います。

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さて、まずは工事契約から2~3ヶ月程前、プランが固まったと同時に木材契約を行い、製材所へ構造材の段取りをお願いします。私たちは必ず軸組模型をつくり、部材同士の接合や継ぎ手、室内からの梁の見え方など様々な要素を検討します。

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工事契約が済んだ段階で、木材検査に行きます。今回のS邸で構造材をお願いしたのは、奈良県吉野の阪口製材所。人工乾燥が主流なこの現代において、自然乾燥に拘り、そして多くの特殊材を含めてストックしているのが特徴の製材所です。並べられている材はS邸、それ以外は自然乾燥中の材となりますが、これはほんの一握りに過ぎません。

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私たちはこの段階で住まい手にも見てもらうことをお勧めしています。一般的には構造材を段取りしている状態から見る機会は非常に少ないですが、この段階から携わっていただくと、自ずと住まいに対しての愛情が強くなります。

『この材料は寝室に見える材料ですよ!』会話が弾み、住まい手のテンションも上がりっぱなしです。今回は阪口社長と勝行さんにも立ち会っていただきました。

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さて、綺麗な材料を手に入れるための木材検査ではありません。木材の強度を決める上で重要な含水率(木材の中に含まれる水分量)とヤング(たわみにくさ)を1本1本計測し、品質を管理することが大きな目的です。立木の状態では元(木の根元側)から水を吸い上げているため、含水率も測る位置によって少なからずバラツキが出ます。そのため含水率測定(写真上)では、元・中央・末と1本につき3ヵ所を計測することで、平均値を取って管理を行います。その他にも注意点はいくつかありますが、木材を知ってこそだと言えると思います。

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木材検査を終えた後、建て方までのもう一つ重要な作業、それが『プレカット打合せ・木配り』です。プレカットは毎度お馴染み、松阪市のコウヨウプレカットにお願いしています。ここからは設計・プレカット工場・工務店の三者がそれぞれの立場から意見を出し合い、懸念事項を解消していきます。今回の工務店は木の家づくりを得意とするコアー建築工房です。ここからは必ず棟梁(大工)にも参加して頂き、建て方に向けてのイメージをつくってもらいます。ここでも軸組模型は欠かせません。およそ2時間みっちりと行い、午前が終了です。

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お昼は松阪牛で力を蓄え、午後からは待ちに待った『木配り』です。手分けして木材を並べていきます。4Mから最長6Mがメインの材料となるため、なかなかの重量があります。

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田尻棟梁と部屋内から見える化粧材を吟味して配っていきます。「番付」と呼ばれるこの作業、出来上がった時の空間を想像しながら行います。とてもワクワクする作業の一つで、私は大好きです。

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赤味勝ちの化粧材、阪口製材所の方々が長年大切に育ててきた材料を無駄に使うことはできません。私たちがしっかりと気を配って使わせていただくこと、それが『木配り』だと思います。

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杉の構造材以外にも、大黒柱を含め様々な堅木(広葉樹)を使用するのがエムズ流。今回はこちらの5本、クリやセン、ケヤキを段取りしました。真っ黒になっている材料も見えますが、これは宝物です。10年程寝かせてあったものを木材倉庫から選んできました。ここからべっぴんさんへ大変身、出来上がりをお楽しみに。

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着工から建て方までには決して十分な時間があるとは言えません。良質な構造材を手に入れるには少しでも早く段取りを始めることが必要不可欠となります。建て方までにこのような段階を経て、ようやく手に入れることができるのです。工事は多くの方にご協力を頂きながら進めていきますが、熱い想いを持った方々ばかりです。そんな想いを繋いでいくのも私たちの役目なのだと思います。

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おまけです、11月3日、文化の日。コアー建築工房では毎年恒例の感謝祭が行われました。いつもは真面目な表情(?)の現場監督大谷さんと田尻棟梁。子供たちに見せる笑顔がいつもと違い新鮮でした。現場でもたくさんの笑顔を振りまいてくれることと思います。

スタッフ 中根