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わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2026.04.19

【蔵出し!自慢の改修住宅作品】~「今井連窓のいえ」(2016)

Msウェブサイトはコロナ禍、大々的にリニューアルされましたが、当時私が、激務の最中であったため、掲載作品は最近の仕事を中心に少量にとどまっています。そこで私、三澤文子が担当する回は、「蔵出し!自慢の住宅作品」と題して、Ms日記にて未掲載の作品を皆様にご紹介させて頂きたいと思います。

2016年、伝統的建造物群保存地区で有名な今井町で、老朽化した長屋状町家が改修されて、完全に親世帯・子世帯が自立した2世帯住宅に生まれ変わりました。

今井町の伝統的建造物群保存地区補助金を獲得するためにも町並みに調和する厳格なルールに沿って、外観が修景されています。

向かって右側(北)が依頼主のお住まいとサロン。そして左側(南)が依頼主のご両親のお住まいです。

実は依頼主は住宅リフォーム会社の代表で、社内用の空間として土間サロンをつくりたいというご希望がありました。そこで、打ち合わせテーブルのある土間と茶室にも使える四畳半の和室をつくりました。写真の柱は古い柱を入れ替えた漆塗りの八角柱です。既存の古材と補強梁との仕口をつくるのに、柱頭の形を苦心して考えたことをよく覚えています。

和室から上がり框とその奥のトイレを見ています。上り框としてのナグリの敷台や壁の漆の色が白木のヒノキの床材の色に、コントラスト強く映ります。

写真左奥のカウンターの向こうにはミニキッチンがあり、ちょっとしたおもてなしができるようになっています。

和室には腰高までの低い開口があるのですが、実は、開口の向こうは依頼主のおすまい。ダイニングやキッチンにつながっています。

それも、この和室からは1m20㎝低い位置にある、いわばスキップフロアなのです。

この写真を見ると少しご理解して頂けますでしょうか。写真右手に1階和室の畳が見えます。そして半地下階のダイニングにあるベンチソファーとダイニングテーブル。

土間サロンのある1階から半地下のリビングを見下ろしたようにみえるダイニングとキッチン。

この半地下空間は増築部分となり、いつもの新築の、Msスタイルの杉材の小屋組とJパネルの野地板が見えます。

先ほど上から見下ろしていたダイニングテーブルとベンチ。その背もたれの上に開口があり、和室につながり、土間サロンの様子も見通せます。もちろんこの開口には襖があって、いつもは閉まっているのですが、このように開けてつながることができるのは、風通しも良く、見え方も、のびのびとして気持ちよいものです。

さて、もう一度外観です。開口部に取り付く格子のデザインだけでなく、工法まで決まり事があり、町並みに面した壁は、土壁で造っていて漆喰で仕上げています。

向かって左(南)はご両親のお住まいです。写真左隅にご両親の家の玄関の格子戸が開いているのが見えます。

古くからこの町に住むお父様は、ご近所どうしのつながりも深く、ここにも土間空間をつくり、気楽な応接スペースにしています。そしてここにも漆塗りの八角柱があります。

ナグリ加工をした敷台はやはり漆で塗っていて、敷台の上に上がって和室へ、さらにご両親の生活空間であるキッチンやダイニング、その奥に水回りがあります。そして2階が寝室です。

ポイントに漆を塗ることには理由があります。古民家の改修には、古材と補強材などの新材が多く存在しますが、黒い古材と、素地の新材の、色の対極を柔らかくするために漆の鮮やかな艶と色が良い仕事をしています。漆のポイントカラーで古材・新材の両者が引き立つと感じているからです。

土間の応接スペースの奥にある茶の間はデイベッドがあり、その奥は水回りです。ここも増築部なので新築と同じ造りになります。

この改修で、古い町家が新築と変わらない耐震性を確保した建物に生まれ変わりました。そして冬は暖かく、夏は涼しい温熱性も優れた住まいになりました。

古い町並みを残すことと、そこに住む人たちの安全と健康も保持するという「良いこと」両方を同時に手に入れることができるということを、多くの方々に知ってほしいと思っています。

(三澤文子)