エムズ日記をご覧のみなさまこんにちは。
関西は今週から梅雨に入り、雨が降る日が多くなりました。自転車通勤の僕はカッパが必需品です。
事務所の梅はすくすくと育っています。
今週のエムズ日記は堀田が担当します。
前回のMOKスクール第一回目が開催された際、講師の中野克彦さん(工人堂)と藤田大さん(淡路校舎)が大工道具を持ってきてくださいました。
カンナやノミなど大工道具が並んでいるのを見ると、つい目が惹きつけられてしまいます。
先週のMOKクラブでも「大工ワザクラブ」が開催され、木又工務店さんの加工場にお邪魔し、大工道具を見せてもらう機会がありました。
木造建築をつくる上で、大工さんにはいろいろな道具が必要となります。
僕の祖父も大工だったこともあり、小さなころから、工場に行ってはいろんな道具があるのを見てきました。
大学を卒業し、僕も祖父と同じ大工から仕事を始めることになりましたが、道具について何度か教えてもらう機会がありました。
戦後、大工として住宅復興の時代に活躍した祖父は、最初の頃は、今のようにプレカットはなく、全て手刻みで仕事をしていたといいます。
今でこそプレカットが主流となったものの、当時は電動の丸ノコもなかったそうです。
そうなると、使えるのはノミ、カンナ、ノコギリ、などの昔からある「手道具」です。
ノコギリも切れ止むと、今のように替え刃ではなく、「目立て屋さん」という鋸の刃を研ぐ専門の職人さんに刃を出していたそうです。
目立て屋さんの腕によっては、木がまっすぐに切れず、切っているうちに曲がっていくこともあったそうです(笑)
最初はホゾ穴一つ開けるのにも、ノミと玄能でコツコツと掘っていて苦労したそうですが、電動ドリルが発売されたことで、一気に木に穴を開ける作業が早くなり、
「こんなすごいものができた!」と感動したことを語ってくれました。
そして電動丸ノコも次に発売され、大工さんの作業スピードは一気に上がることとなったそうです。
こちらは昔、祖父が使っていた丸ノコです。
年配の大工さんは、今よりも大きなサイズの丸ノコを持っていることが多いです。
プレカットの機械がない時代は、構造材を大工さんの手刻みで刻んでいたため、大きい部材を切るためには大きな刃が必要になります。
チェーンソーで構造材を刻む大工さんも見る機会もありました。
プレカットの家づくりが主流となり、大工さんが大きな材料を刻まなくなると、道具もそれに合わせて小さなものに変化していきます。
道具は時代に合わせて形を変えていくんですね。
この大きなサイズの丸ノコは今はもう見かけません……
と思っていたらありました!
木又工務店さんの大工さんが使われていたおっきな丸ノコ!!
かっこいいですね!
しかも充電式です!
最近発売されたようです。
「こんなの買うのは木又工務店くらいしかいない」と木又さん自らおっしゃっていました。
まったく売れていないそうです(笑)
道具メーカーから、大工さんへ「この丸ノコを使う仕事をしてください」というメッセージにも感じられます。
この丸ノコで150mmの厚さまで一回で切れるそうです。
一般的な丸ノコの切断深さが45mm~65mmくらいなので、倍以上の厚さを一回で切れるということですね。
僕も少し欲しいなと思いました(笑)
構造材を刻んでる大工さんには、必要な道具ですね!
今後、この道具を使いたい大工さんが、構造材を刻むようになるといいですね!
年配の大工さんと一緒に仕事をしていたときですが、道具を宝物のように大切に扱っていることを感じました。
それは手道具だけではなく、「超仕上げカンナ」という自動でカンナ削りをしてくれる大きな機械についても同じでした。
僕が材料削りを任されたときに、同じ刃が当たるところでずっと削っていたら、
「そんな同じところばっかりで削ったら刃が熱くなって傷むやろ!道具のことを考えて大切にしないとあかん!」と怒られたことがあります。
機械に対しても人間と同じように、心をもって接することの重要性に気づかされました。
大工さんはお昼以外に、朝10時と15時に休憩するのですが、人だけではなく、道具にも休憩させているんですね。
世の中にはいろんな道具を使う職業がありますが、その中でも大工さんは道具を持つ種類で言うと一番多い職種の1つではないでしょうか。
家の躯体を刻んだり、床を貼ったり、壁や天井など、家具にいたるまで様々な場面で、適した道具が使われます。
毎日使うからこそ道具を大切に手入れし、愛情があるのを感じます。
こちらの道具は昔からある「毛引き」という道具を木又工務店さんの大工さんがアレンジし、刃の代わりにボールペンの芯を付けたものです。
これは柱や梁の芯墨を付けるために、考えたものだそうです。
一回一回、差金で寸法を測って、墨を付けるより、これを使えば早く正確に墨が付けられるそうです。
見た目は素朴なものに見えますが、これが芯墨を付けるために考え出された最も良い道具なんでしょう。
大工さんは、よく現場で自分独自の道具を作ったりしながら、いかに早く仕事が終わらせるかを考え、自分のやりやすい環境で仕事をしています。
設計者は、今ではパソコン1台でほとんどの仕事ができてしまう時代で、いろんな便利なソフトが日々出てきています。
大工さんに見習い、ものを大切にし、最新の技術を取り入れつつ、ペンや定規を使った手仕事の可能性も同時に考えていきたいと思いました。
堀田