今から1か月前の9月10日・11日、広島県庄原市(しょうばらし)の古民家の宿を訪ねました。ちょうど開業から丸4年のタイミングでお施主さんからのお招きもあり、メンテナンスを兼ねて設計の若手(中堅)メンバーで庄原に行ってきました。
宿の正式名称は、『せとうち古民家ステイズ』。庄原の美しい里山にある古民家を「一棟貸し」の宿として改修するプロジェクトです。
□せとうち古民家ステイズ https://cominca-stays.jp/
近年、Msではチームで設計を行う「プロジェクト型」の仕事にも積極的に取り組んでいます。庄原では、京都の六角屋さんのコンセプトに共鳴し、Msと住宅医メンバーが参画しました。古民家を活用したプロジェクトでは、まずはじめに『調査・診断』がです。私たちに声がかかったのも、三澤文子さんを中心に長年取り組んできた「住宅医」の活動あってこそ。5年前の2018年の夏。調査員15名で、2泊3日で3棟の古民家を調査したことが始まりでした。
これからの時代。各地域で、専門スキルを持つ仲間と”共同・連携”していくことはとても大切になると考えています。
今回のMs日記では、庄原の宿の「開業後の変化」についてご紹介したいと思います。 1軒目の宿は『不老仙(ふろうせん)』です。
写真手前の曲がった”栗の土台”に着目してください。この場所にはかつて重厚な蔵があり、4年前の工事では崩れかかった蔵を解体することしかできなかったのですが、新しくデッキとハンモックがつくられていました。
そして、五右衛門風呂!まで置かれています。抜群のロケーションを誇る「不老仙」ではバーベキューなど屋外の活動が人気なようです。
内部は手入れが行き届き、とても気持ちがいいです。赤色のフローリングは漆が施されています。みんなで「漆塗りワークショップ」を行ったことが懐かしく思い出されます。
2軒目の宿は『こざこ森』。手前のハンモックに座っているのが、担当の日野さん(WASH建築設計室)です。”古民家グランピング”がテーマで、家族でアウトドアを楽しむ開放的なつくりですが、思いかけず「音楽イベント」などでも活用されているようです。
3軒目が『長者屋(ちょうじゃや)』です。ちょうど蕎麦の実が白く色づき、この秋には蕎麦打ちのイベントも企画されるようです。リピーターも多いようで、なんと結婚式の会場としても利用されたとお聞きしました。
宿の一角には、牛小屋(ダヤ)のなごりを残す『ヒストリールーム』があります。4年前は展示まで準備できなかったのですが、今ではパネルがきれいに展示されています。濃密な歴史と文化を伝える空間を残すことができたことは、とても良かったと感じています。
200年を超える歴史がある長者屋。茅葺屋根当時の写真も展示されています。
長者屋からすぐ近くの見晴らしのよい棚田には、テラスがつくられました。この地域を愛してやまない奥田工務店の奥田さんより、この三河内の棚田が2022年に「つなぐ棚田遺産」に選ばれたとお聞きしました。古民家の改修を通じて、地域の歴史や文化を育んでいくプロセスの一端を担えたことを、本当に嬉しく思います。
□1000年アート(ザ・里山アート) https://www.shobara-info.com/satoyama-shobara/art/
□つなぐ棚田遺産(比和・三河内の棚田) https://www.shobara-info.com/topics/3211
縁側で集合写真を撮りました。(左から3人目が奥田さんです)
『古民家の宿開業以降、地元での影響力がとっても大きいです』とお聞きし、実際に古民家を活用した宿やカフェなども増えてきているようです。
地域とつながり、歴史を紡いでいく古民家再生プロジェクト。皆さんと、これからも取り組んでいきたいテーマです。
Ms 上野耕市
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