非常勤&リモートワークの村上です。
1985年にエムズ事務所が設立されて、今年で36年。 同年3月竣工の三澤邸も今年で36歳になりました。木肌の色も茶色になり落ち着きが出てきました。そしてまだまだ健康。人間の36歳と同じ感じでしょうか。
近々、某雑誌のロングライフ住宅特集で、三澤邸が取り上げられることになりました。一般的な住宅では築36年になると「古家」扱いで、建て替えが検討される頃です。
エムズの家づくりでは、構造材として使われる木の年齢と、家の寿命が同等、もしくはより長寿になるよう設計されます。木の年齢が80歳であれば、それを構造材につかった住宅も80歳以上長生きするということです。
なので、36歳で「ロングライフ」と呼ばれることを不思議に感じてしまいます。建物の人生(?)はまだまだこれからなのに。
事務所設立36年経ち、エムズ住宅の住まい手からメインテナンスや増築のご相談をよく受けるようになりました。築20年を過ぎると、どんな建物でも、やはりあちこち不具合が出てきます。その時にきちんと不具合を調査診断し適切な処置をすることが、長寿命につながります。
先日は築22年のお宅を訪問してきました。今日はその住宅T邸と、住まい手、IさんとRさんのお話です。
玄関には珪藻土の壁に1999年竣工当時の家族の手形が記されています
ご訪問は今回が2度目。メインテナンス調査のあと、落ち着きのあるリビングでお茶をいただきながらお話をうかがいました。
木の家に住まわれての感想をお聞きすると、まず、「ここのおうち、素敵ですね!」と声をかけてもらえるのがとても嬉しいと、満面の笑みでお話しくださいました。住み心地も満足しているけれど、外から見ても、お客さんとして内部に入られた方からも「素敵」と言ってもらえるのはとても嬉しいこと、よくわかります。
22年の間に、業者による塗装を2回、加えてご家族でもされていて、外観も綺麗なままです。最近知り合った方から「新しいおうちだと思いました。」と言葉をかけてもらったそうです。やはり手入れは大切ですね。
それに、躯体がしっかりしていることへの安心感。2階にピアノを上げるときに、業者の方から、床は大丈夫か尋ねてくださいと依頼され、康彦さんに電話をすると「TさんのおうちはどこでもOK」と即答されたエピソードを話してくださいました。
住まい手のご夫婦とエムズとの出会いは、朝日新聞に連載されていた文子さんの記事でした。小児喘息だったIさんは、自然素材の木の家に住みたいけれど、国産材は高価なので無理だと思われていたそうです。
ところがその文子さんの連載を読み、国産材は高くないことがないことがわかりました。しかも事務所は吹田で、とても近い場所にあります。エムズのお話会が開催されることを知りすぐ応募して、康彦さんとお話。それがきっかけで康彦さんに設計を依頼されました。
木材は奈良県川上村産です。
山の見学会の様子。手前は文子さん
お子さんはまだ小学生でした。
Rさんは22年住まわれて、開放感あふれる空間と、木材と珪藻土のおかげで湿気を感じないこと、冷房を使わなくても風通しが良く気持ちよく過ごせることをとても気にいっているとお話しくださいました。
そしてT邸の隣には...
文子さんがデザインした住宅が建っています!
T邸の住まいをすっかり気に入られたお隣さんがエムズに設計依頼して来られ、文子さんの設計で2019年に竣工したのです。
康彦さんは2017年に亡くなられましたが、このように康彦さんと文子さんによる住宅が隣同士に並ぶ光景に、訪れるたび胸を打たれます。
Rさんは「ハーティフルフラワー」と呼ばれる粘土のアートフラワーの講師をされていて、本物と見間違うようなお花があちこちに飾られてあります。わたしも粘土に少しだけ触らせてもらいましたが、自分の好みのコサージュが作れるといいなと思いました。新築時には小学生だった息子さんが結婚されたときには、豪華なブーケを製作し、式場に飾られたそうです。
きっとT邸も、お手入れをしながら長く住み続けられることでしょう。10年後、20年後、もっと先にも訪れて、経年変化を確かめてみたいと思える、心温まる訪問になりました。
村上洋子