みなさん、こんにちは。今回のMs日記は非常勤の村上が担当いたします。
Msでは数年に1度、宿泊研修が行われていて、今年は済州島へのツアー計画を立てていました。ところが予定していた日程が韓国のお盆と重なり、見学目的の美術館や伊丹潤記念館などが休館になることがわかったのです。研修に行けなくなるかもと残念に思っていたところに、文子さんからメールが届きました。
「その代わりに、8月28日(金)29日(土)京都「俵屋」にMsで1泊したいと思っています。 上質な建物を設計するために一流の宿に泊まり、一流の和食を頂くのは大切な勉強です。」
なんと!俵屋旅館で宿泊研修!

俵屋さんは建築に携わるものであれば誰もが知っている歴史ある旅館。建築界に限らず、他分野にも多くのファンがいる憧れの場所です。それぞれに日々忙しい生活を送っているため、みんな俵屋さんで過ごす特別な時間を心待ちにしていました。
胸をときめかせながら俵屋さんに到着し、男衆と呼ばれる方々からお部屋の説明を受けたあと、食事の時間まで館内を見学させていただきました。この機会を逃さまいと、眼光鋭く観察や採寸を開始。

館内には低座の椅子があちこちに置かれています。渋い花座に似合う鈴木さん。

中坪には、うさぎと季節の植物、そして窓越しに見えるラウンジの屏風には月とススキに萩。よく考えられていながらも、さりげないしつらえにじっと見入ってしまいました。

中坪から屏風のあるラウンジを通って図書室へ。足を踏み入れると、ひんやりと冷えた空気に包まれました。目の前のお庭に吸い寄せられるように床に座り、しばらくの読書。サーキュレーターで撹拌された柔らかな風が本当に心地よく、ずっとここにいたいと思う空間でした。それにしてもエアコンの吹き出し口はどこにあるのかと、上野さんと一緒に探しました笑

1階の見学を終えるとみんな2階にあるスタディに集まってきました。文子さんもリラックスした表情です。2階にも小さなお庭があり、自然に視線が外を向きます。

館内の見学が終わり、男性4人が泊まる部屋「富士」で会席料理のお時間です。2人のお部屋係の方が、タイミングよくお料理を運んできてくださいました。どれもすばらしいものばかりだったのですが、今回は焼き物だけご紹介します。琵琶湖の鮎の笹焼きです。熱した石の上に笹を敷き、その上で焼かれた鮎は、笹の爽やかな香りがして、川魚が苦手な私でも、丸ごとおいしくいただくことができました。


堀田さんが同郷の鮎を頭からガブリと。
お食事が終わり部屋に戻ると、窓の外にロールスクリーンが下りていました。ふかふかのお布団も用意され、幸せな気分でぐっすり休みました。
翌朝は、再び富士で朝食をいただきました。食事中、文子さんが前日に読んだ、中村外二棟梁の本の一節を読み上げてくれました。
「掃除をきちんとやらせると、身の回りが美しく片付き、ものを大切にするようになり、仕事の手順もよくなって何かにつけて効果が上がります。それで掃除をやかましくいっているのです。掃除をしているのを見ていると、その人の心の状態がよくわかります。まじめにやっているか、いやいやしているか、掃除の仕方でそれぞれの性格や品格が判断できるような気がします。仕事の上手な者は、もちろん掃除も上手ですし、材料ひとつ道具ひとつにしてもきちんと整頓し、ものを大切に扱います。また身の回りを汚さないようになります。自分で掃除する苦労を考えると、タバコのすいがらひとつを捨てるのにも気を配るようになります。そういう心がけが仕事の面にも現れますからこわいものです。掃除がどんなに大切なものかということをつくづく思います。」
俵屋さんでは、お部屋係の方が担当のお部屋の掃除もされるそうです。毎日畳まで拭き掃除。そしてお風呂は男衆の担当で、木部にカビが出ないように毎日手入れをされているとのことでした。

最近Msでは、設計した建物のメンテナンスに力を入れていて、文子さんが率先して浴室のカビ取りを行ったり、塗装を施したりしています。それだけに中村棟梁の言葉や、俵屋さんのお掃除に共鳴するのでしょう。
チェックアウトの時間まで、今度は女性3人のお部屋「泉」にスタッフ全員が集合し、数寄屋建築とお庭を思う存分観察し、鑑賞しました。18室あるお部屋は、毎年のように1室改修が行われているそうで(1室分の改修費用が家1軒分らしい)、時代に合わせて変化しながら伝統をつなげていく姿がすばらしい!と思いました。

建物や働く方々の応対の素晴らしさはいうまでもありませんが、お部屋の手入れ、お料理の薬味、空調の吹き出し口など、意識しなければ見えないものの、大きな存在を再認識できた宿泊研修でした。文子さんには感謝しかありません。
おまけ:窓の外に下ろされていた1枚の大きなロールスクリーンは、朝、リモコンを見つけた石田さんが上げてくれました。そのスクリーンが素敵で、文子さんがみんなに見せてあげたいと、全員でリモコンを探すことに。ついに髙田さんが上下と書かれたボタンを見つけて、「下」を押してみると…文子さんが座っていた掘りごたつの机が下りてきて、足を挟まれた文子さんがキャーっと大騒ぎ。という場面もありました。

今回の宿泊研修で見たことや感じたことを忘れず、俵屋さんのように時代に合わせて進化を続けていきたいと思います。
村上洋子



