秋のMOKスクールツアー2017
11月中旬、秋のMOKスクールツアーで静岡県に訪れました。今回のツアーでは製材所から美術館、大型木造建築、はたまた遺跡まで幅広く見て回ります。
一日目は天竜川が流れ、天竜材の産地である浜松へ。
天竜川流域には約9万haの森林が広がっています。そのうち約80%を占めているスギ・ヒノキの人工林は「天竜美林」と呼ばれ、そこから取れる天竜材は粘り強く、色も良い良材です。
まず最初に訪れたのは、「天竜の杉檜と生きる」を理念とする(株)フジイチです。昭和21年に創業し、立ち木仕入から製品販売まで行う老舗です。
写真の様な丸太材の状態で良材かどうかを判断する方法や年輪の詰り具合から木材の質を判断する方法等、実際に見て聞くことで納得する内容が盛りだくさんで、とても興味深い話ばかりでした。気になることをその場で聞けるのはツアー参加者の特権ですね!
実際に製材しているところも見学させていただきました。
あっという間に丸太材が加工されていきます。
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木材が建築物として構築される前にどのような手順を踏んで加工されていくのか、目の前でまじまじと見れる貴重な時間でした。
続いて訪れたのは、藤森照信氏設計の秋野不矩美術館です。
建物には天竜杉を使用したり、壁には漆喰を使用したりと自然素材が多く取り入れられとても土着的な雰囲気になっています。
内部空間には梁組みが残されており、鉄筋コンクリートをあまり感じさせない造りになっていました。
自然素材の持つ不規則性がとても温かみがあり、ほっとする空間でした。
そして、一日目の最後に(有)石牧建築を訪れました。石牧建築では、加工の際、木材に墨で印をつけます。そして手道具を駆使して刻む伝統的な大工技術を用いた建築をしています。構造部材等の家の骨組みだけでなく、建具枠などの造作部材と建具や家具の製作も行っています。
実際に大工さんが手刻みで加工を行っている作業場も見せてもらいました。
そうこうしているうちに辺りは真っ暗です。一日目だけでも、とても充実したスケジュールで濃密な一日となりました。
石牧建築を後にし、本日の宿にチェックインです。
夕食・懇親会では、色々な方と交流でき、建築話から世間話まで幅広い話題で盛り上がりました。
お酒も入り、皆さんご満悦です。湯船にもつかり、疲れた体が癒されました。
ツアー2日目は、まず漆床の家からスタートです。とてもいい天気となり、朝から気持ちがいいです。設計を三澤文子、施工を石牧建築が行っています。
光が室内に射し込み、漆塗りをした床の色がとてもいい味を出しています。とても綺麗に住んでいただいており、丸窓から覗くとまた違った家の表情が見えます。
家具もとても雰囲気の良いものばかりで、つい魅入ってしまいました。私もこんな家具が欲しいです。
次に向かったのは住宅から打って変わりまして、教科書にも出てきたであろうあの登呂遺跡です。
竪穴式住居がいくつもありました。背景にある現代住宅とのギャップがすごいです…
お昼は遺跡の近くにある登呂「もちの家」でお蕎麦を頂きました。ここは実は200年前の奥会津の農家を移築したものです。
店内には交差梁が架かっており、思わず長居したくなる、とてもゆったりできる空間でした。
そして、ツアーの最後に内藤廣建築設計事務所が設計した草薙総合運動場体育館「このはなアリーナ」へとやって来ました。延床面積1万3000㎡程の大型建築です。この施設は静岡県草薙総合運動場リニューアル事業の一環として、現有施設の建て替え工事として計画されたものです。
中へ入るとメインフロアが拡がり、その空間を支える杉の集成材には樹齢50~60年の材を中心に使用してあります。構造体として利用できない余剰材についてもメインフロアの天井ルーバー材や2階エントランス壁材として二次利用されています。この日はちょうど子供たちのドッジボール大会が催されていました。この木質の大空間で、とても白熱していました。
最後にMOKスクールツアー参加者で記念撮影!お疲れ様でした!
いかがでしたでしょうか。木材の製材所から木材が遺跡から大型建築物まで使われている様子を実際に見て回り、改めて木材の表情の豊かさを感じました。木造建築の可能性を感じる二日間で木造に携わる者としてとても充実した二日間だったのではないでしょうか。
来年のツアーではどこを訪れるのでしょうか。今から楽しみです。
Msスタッフ宮本