「不老仙(ふろうせん)」
築100年程度の古民家を改修した、宿の名称です。
聞くところによると、その昔、仙人が暮らしていたという里山の奥地、
庄原市上谷地区に位置しています。
はじめてこの地を訪れた時の感動は、今でもはっきりと覚えています。
上写真は、建物工事前の様子です。
(現在、右手の建物は解体しています)
美しい山の稜線と谷のせせらぎ。
幾重にも重なる石積みの棚田と鳥のさえずり。
これ以上ない、豊かな自然環境の中にひっそりと建物が佇んでいます。
建物側からの、見返しの風景です。
隣家まで約200Mの距離があり、空、山、棚田による風景が広がります。
「棚田」と書きましたが、
正確には、この地域で育つ『比婆牛(和牛の元祖といわれています)』のエサとなる「牧草地」です。
上写真が、改修後の外観です。
木造平屋建て(約55坪)。
間口が約20Mあり、縁側に面した開放性のある連続窓が特徴です。
さて、
今回のプロジェクトは、Ms発のチーム設計です。
設計統括:六角屋 三浦史朗氏
協働設計者:Ms + 住宅医チーム
「不老仙」においては、
住宅医でMs事務所OBでもある、WASH建築設計室の日野弘一氏に
全面協力を頂きました。
施工は、地元の工務店: 長谷川木材店:長谷川智久氏 です。
内部の様子です。
玄関板間は、ワークショップにて、皆で製作した「漆」の床板です。
板間の奥に、和室2間が続きます。
大きな間取りの変更は行わず、
漆喰の「白」を基調に、さわやかな印象となるよう仕上げました。
ソファ、座卓等の家具類も、落ち着きのあるデザインで製作しました。
寝室は、1400巾のベッドを二つ。
地場の桧を用いて、地元のベット製作メーカー:「舛元木工」さんに製作して頂きました。
高さを280に押さえており、和室によく合っています。
ベッドボードには、照明+コンセントを用意しました。
一段下がった土間には、杉板をはり、キッチン&ダイニングをつくりました。
キッチンは既存利用ですが、モルタルで塗り直しています。
ご家族やグループで、楽しく料理ができる広々としたスペースです。
家具全般は、大阪在住の沖本雅章氏(大工)に製作して頂きました。
Jパネル(杉)を使った机・ベンチは、よく考えられたディテールで、好評です。
洗面、浴室などの水廻りは、ゆとりを持たせてつくりました。
天井・壁は桧。
床、浴槽は、左官仕事(洗い出し&砥ぎ出し)で、一体としてデザインしています。
今回、古民家を宿泊施設に再生させるということで、
現実には、「法規、工期、コスト」など、様々な制約がありましたが、
チームで協力して乗り越えることができました。
上写真は、竣工時のオフショットです。
(玄関先のベンチにて)
古民家改修には、
ひとつの建物だけではなく、より広く地域社会に貢献していけるストーリーが内在しています。
今後も、古民家を「コア」とした、地域再生に向けた取組みを続けていきたいです。
※庄原市内では、3棟目『こざこの森』が工事中です
広島県庄原市、古民家の宿。
ぜひ、一度、訪れてみてください。
Ms 上野耕市
以下、参考URL
せとうち古民家ステイズ(Setouchi Cominca Stays)
せとうち古民家ステイズHIROSHIMA【不老仙】予約フォーム
https://shobara-info.com/spot/2072
せとうち古民家ステイズHIROSHIMA【長者屋】予約フォーム