今年は、日本海側を中心に思いがけない雪に見舞われた寒い冬でした。
今回のMs日記では、近年、Msの寒さ対策の定番となりつつある、
「床下エアコン」にスポットを当てて書きたいと思います。
2019年に開業した、古民家を改修した宿「長者屋(ちょうじゃや)」を事例にレポートいたします。
長者屋は、広島県庄原市の北部(中国山地の中央付近)に位置しています。
上写真は、今年の1月の雪景色です。
広島市内と比べて、平均気温で約4℃ほど低く、寒い年だと最低気温-10℃になることもあるようです。
床下エアコンとは、簡単にいってしまえば、
「床下にエアコンから得られる暖気を送り込み、足元から温めるシステム」です。
このシステムと出会ったのは3~4年ほど前のことだと思いますが、
はじめて聞いた時は、結構、衝撃的!(そんなこと出来る?という驚き!)でした。
長者屋では、「パッシブ冷暖(参創ハウテック)」というシステムを導入しており、
温熱環境のエキスパート:中野弘嗣氏(水の葉設計社)の助言を元に計画しました。
良いところは・・
たくさんあるのですが、
ここでは、「広い面積をカバーできる」点を挙げたいと思います。
通常のパネル式の床暖房だと、パネルを敷いている箇所だけが温かい(当たり前)ですが、
床下エアコンは、床下空間全体に暖気がまわるため、広範囲の面積をカバーできます。
長者屋は延べ200㎡ありますが、メインの居室を区分して、暖気を廻しています。
床下=ピット(暖気溜り)になるので、床全体が、ほんのり温かくなります。
ヒートポンプ式で高効率の日本製のエアコンを連続運転することで、
ランニングコストも比較的安く抑えることができます。
床下の様子です。
断熱材に包まれたダクトがみえます。
「パッシブ冷暖」システムでは、メーカーの担当者がダクトの径を計算により求めて、ダクトを製作してくださいます。
このダクトによって、エアコン本体から離れた部屋にも、暖気を引っ張ることができます。
施工面では、床下空間をしっかり断熱材で包むことが肝心です。
(長者屋では、防湿コンクリートt60+気密シート+スタイロフォームt30)
床ガラリの様子です。
吹出口で約30℃の温風が出ています。床全体がじんわり暖かく快適です。
<写真は、中野さんに風量測定を実施して頂いた際のものです>
このガラリは、木製の既製品ですが、
床板が漆塗の杉板のため、ガラリにも同じ漆塗を施しています。
和室でも効果を実感できました。
既製品のガラリを細くカットして、敷居の際に設置しています。
畳に布団を引いて寝てみましたが、布団が温かくなる感じがあり、気持ち良く眠ることが出来ました。
築200年の改修計画のため、建物の断熱性能は満点とはいきませんでしたが、
それでも、春~秋の中間期を含めて、床下エアコンの効果が発揮されているようです。
(新築のお住まいなど、断熱性能の高い条件では、もっと効率が高まります)
春までもう一歩。
皆さま、温かくしてお過ごしください。
上野耕市
参考HP
■パッシブ冷暖(参創ハウテック)
http://www.passivereidan.jp/index.html
■せとうち古民家ステイズ