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わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2021.04.17

Azumi setoda・yubune竣工報告① ~木造共用棟(改修工事)~

Ms日記をご覧の皆さん、こんにちは。

今週のMs日記は、上野耕市が担当です。

本日は、この春、美しい島々が連なる瀬戸内海 “生口島(いくちじま)”にオープンした、

『Azumi setoda(アズミセトダ)』について竣工報告いたします。

Azumi(宿泊施設Azumi:22室、yubune:14室、計36室)には、

クライアントと、マスターアーキテクト(設計統括):三浦史朗氏による、

新しい感性によって描かれた、他のどこにもない、景色が広がります。

旅とは、何か。

旅館とは、何か。

対話による対話を重ねて、ひっそりと、瀬戸内の地に、誕生しました。

このプロジェクト。

私たちMsにとっても、3年以上の時間をかけて、じっくりと大切に取り組んだ想いがあります。

また、住宅医の有志メンバーによる詳細調査に始まり、

Msで培ってきた木造改修のスキル、木の設計手法を余すところなく展開しています。

皆さんにご報告できる日を迎え、とっても嬉しく思います。

① 0006_009_20210207_0484.jpg

木造共用棟外観  Photo Tomohiro Sakashita

設計は。

六角屋(三浦史朗氏)+Azumi setoda設計チーム。

今回のプロジェクトのために、特別に組まれたチームです。

私たちMsは、三浦史朗氏の指揮の下、2つのパートを担当させて頂きました。

① “改修設計”~築147年の豪商の屋敷を、旅館のコア(共用棟)として再生させること~

② “内装設計”~新築する客室を、無垢材を使って上質な空間に仕上げること~

⇒ 本日は、①について、ご紹介します。

② 1蟒コ遽噂0008_013_20210207_0160.jpg

Azumi setoda外観(一番奥にみえるのがS造2Fの宿泊棟) Photo Tomohiro Sakashita

Azumiのコアは、

築147年(明治7年)の豪商の屋敷、『旧堀内邸』からなります。

この『旧堀内邸』のもつ、歴史と文化、地域とのつながりを、新しい宿に生かしていくこと。

ゼロ(無)ではなく、地域に潜在するポテンシャル(有)を発見することからから、

プロジェクトがはじまりました。

③ 001-空撮-1.jpg

鳥瞰(瀬戸田港の方面をみる、手前の大きな建物が鉄骨2Fの宿泊棟)

Azumiは、生口島「瀬戸田(せとだ)」港の入り口に建ちます。

歴史的には、港が、その町の玄関。

『旧堀内邸』は、塩づくりと、海運業で栄えた、瀬戸田を象徴する大切な場です。

④ 012-空撮-12.jpg

鳥瞰(しおまち商店街の方面をみる)

港から、Azumiを経て、地元の「しおまち商店街」へ繋がります。

町の景観に調和するよう、ヴォリュームを抑えた”分散型の建物配置”となっています。

道を介して、3つの敷地に、6棟の建物で、施設が構成されています。

町に開くこと。

計画当初より、メンバー全体で共有してきたコンセプトです。

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外観(北西角より、「しおまち商店街」方面をみる)

改修により、当時からの”町の顔”を再生しました。

1Fは黒漆喰、2Fは白漆喰の2トーン。

瓦は葺き替え、六角名栗の木柵は新しくつくり直しています。

施工は、大和建設(@福山市)。

瀬戸内エリアで、魅力的な建築をつくりつづける、ハイレベルな建築集団です。

たくさんの皆さんのご協力の下、

電柱移設、道路美装化も実現することができました。

⑥ 0021_049_20210207_0699.jpg

内観(エントランス~ダイニング)Photo Tomohiro Sakashita

内観です。

元々は、玄関土間以外、床<高さ60cm>があり、畳が敷かれていました。

その床をすべて取り払い、「研ぎ出し(地元のマサ土)」で仕上げています。

土足利用です。

左官仕事は、”青色の漆喰壁”と共に、齋藤氏(齋藤左官)の手によるもの。

三浦氏のコーディネートによる、職人さんの技術が光ります。

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内観(ダイニング)Photo Tomohiro Sakashita

2F床も一部を取り払い、ダイニングとして再生。

皆が感動した、「美しい桟割の障子」は、旧堀内邸の障子をそのまま活用しています。

町(通り)に面して、”食”の場があること。

求心性と、温かみのある、パブリック空間は、町の賑わいと呼応します。

とっても!大変だった、

「基礎工事」(地中にコンクリートの梁がしっかり入っています)と、

「耐震補強工事」(屋根、床、壁をしっかり補強しています)は、

また別の機会にご説明いたします。

⑧ 0042_095_20210207_0332.jpg

中庭・蹴鞠垣(けまりがき)Photo Tomohiro Sakashita

施設の中心には、中庭を配置。

2層分の高さ(6M)がある、垣根がぐるりと廻ります。

プライバシーの確保と、光・風などのバッファーとなります。

この垣根。

古い文献より、『神事である、”蹴鞠(けまり)”をするための空間づくり=蹴鞠垣(けまりがき)』の構成を学び、いまに再解釈してつくられました。

Azumiを象徴する景色です。

三浦氏・外構工事担当の西之園氏(WA-SO design)・Azumi設計チームのメンバーから、

多くのことを学ばせて頂いた場所です。

⑨ 0049_112_20210207_0640.jpg

離れ個室(ダイニング)Photo Tomohiro Sakashita

“既存の庭”を残した、離れの個室です。

2面に開いたガラス面と、低く抑えた床が、ゆるやかに境界をぼかします。

『治すなら、当時の姿以上の魅力を纏うよう』に設えました。

⑩ 0035_079_20210207_0404.jpg

2Fラウンジ Photo Tomohiro Sakashita

2Fラウンジには、ゆったりとしたオリジナルソファを配置。

製作は、土井木工@府中市。

三浦氏が振るタクトのもと、それぞれのエキスパートが腕を振るい、空間を形づくります。

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夕景 Photo Tomohiro Sakashita

そして、夕景。

宿の灯りが、繊細な格子を通じて、町(通り)をほのかに彩ります。

旅館とは、家(ホーム)である。

そして、その町の一番の誇りである。

プロジェクトを通じて、携わったすべてのメンバーで何度も確認した言葉です。

瀬戸田から。

潮目が変わり、

新しい価値観と想像力と感性で、渦を描くように、物語がスタートしました。

上野耕市

Azumi setoda公式HP

Azumi Setoda

Azumi yubune公式HP

https://azumi.co/yubune/