今週のMs日記は、まだ夏の暑さが色濃く残っていた文月の終わり、埼玉県ときがわ町の久道工務店さん訪問記です。久道さんは、現在設計中の住まい手さんにご紹介いただいた大工さんです。
この森の直ぐ目の前、文子さんの視線の先に久道さんご自身が設計・施工した自邸が建っています。
重厚な構造材を用いて伝統構法で造られた木造部分が、1階RC造のピロティの丸柱に支えられて、浮かんでいるような印象です。
リビングは、丸太梁を組み上げ、木組みを活かしたダイナミックな空間。
玄関建具の取っ手や照明器具は、ロートアイアン作家の加成幸男さんに特注して製作したとのこと。
伝統構法でありながらも古風ではない、久道さんの感性が随所に光る唯一無二の空間です。
久道利光さんは以前から住宅建築などの雑誌で三澤さんの記事を読んでいたとのことで、文子さんと同い年であることもわかり、木組みの住まいについて共感し合う点も多く、文子さんと意気投合。
久道さんが改修を担当し、元々のラーメン屋さんがおしゃれな人気イタリアンに大変身したお店を案内していただき、待合のベンチで席が空くのを待つ間も苦にならないほど、話は尽きません。ランチをごちそうになり、食後には、久道さんおすすめのプリンも堪能。
午後には、久道さんの加工場も見せていただきました。加工中のクリの曲がりを活かした丸太梁がみごと。このような材のストックが作業場の内外にたくさんあり、まるで宝の山のようです。
大経の柱や梁材・広葉樹の板材が、出番を待ちつつ静かに眠っているように感じられます。数年以上保管され乾燥されている材は一見黒ずんでいますが、表面を仕上げれば(削れば)きれいな木目が現れることでしょう。
今回のプロジェクトで、どの材料にスポットライトが当たるのか、とても楽しみです。久道さん曰く「手元にあった材料を使った」という下屋屋根を支える方杖の組み方にも工夫が見られ、文子さんも興味津々。
お弟子さんの加藤靖さんにもご挨拶。施工中は、なにかと連絡を取り合うこともあるため、早速、LINEのお友だちになっていただきました。
お隣には、建具製作を依頼予定の杢正さんの工房があり、丁度休憩時間にお邪魔してご挨拶。
久道さんと意気投合し、気付けば、会ってから6時間休む間もなく話し通しだった文子さん。今回のプロジェクトは1年間かけてじっくりと施工する予定で、久道さんの技術と文子さんの設計を融合して造られるK邸は、完成だけでなく施工のプロセスも含め、とても楽しみです。
松岡利香