3月に入り、桜の開花が気になる季節です。
日中は春らしい暖かさで、吹田市ではスイセンに続き、モクレンやユキヤナギなど、公園の花々が咲き始めています。
さて本日は、昨年7月末に着工した「豊中市Y邸」が竣工しましたのでレポート致します。
敷地は、豊中市内の閑静な住宅地にあります。
元々は、敷地の真中に、40坪ほどの総2階の住宅が建っていたのですが、
70代のご夫妻が「コンパクトな家で、心地よく暮らしたい」との依頼あり、
延床面積で28坪の住まいを計画しました。
将来、息子さん世帯の家をもう一軒建てられるよう、東側に大きな庭(後施工)をとっています。
設計は、三澤文子(Ms)。
施工は、沖本雅章(㐂三郎)。
約7ヶ月半の工期で、”手刻み・手仕事の木の住まい”をつくりました。
最大の特徴は、東面の「ポーチ」です。
雨に濡れず、リビングに直接アクセスできるよう、大きく庇を出しています。
来客や、将来もし介護が必要になったときに備えて、外からの動線を確保しました。
柱は八角に加工。
ポーチ内部は、杉板を素地で用いており、木のぬくもりを感じることができます。
外側にも下足箱やゴミ箱を設けて、利便性にも配慮しました。
玄関の様子です。
ポストやインターフォンなど、雑然としがちな玄関まわりも、すっきりとシンプルにまとめました。
玄関扉は木製ガラス戸ですが、内部に、『蚊帳(かや)生地の網戸/鍵付』を設けて、
視線を遮ると同時に、やさしい風合いに仕上げました。
玄関内部の様子です。
壁、天井に杉板を張っています。
収納扉・式台には「漆」を塗り、小さな空間にも品格を持たせます。
式台は、沖本さんが手仕事で『チョウナ加工』を施してくださり、
足触が良く、愛着のある一品ものに仕上がりました。
キッチン~リビングは、一体のワンルームになっています。
建物は2間半の間口で細長いプランとなっており、70代のご夫婦の生活が、1階ですべて完結します。
床は、足触りの柔らかい桧(ヒノキ)です。
きれい好きの奥さんを中心に、ご家族で「米ぬか」で拭き掃除をして頂くことになり、
あえて無塗装のまま、引き渡しています。
沖本さんいわく、『(メンテナンスを含めての)”健康住宅”です(笑)』
経年変化も楽しみです。
コンパクトでありながら窮屈さを感じさせないよう、様々な工夫をしました。
一つは、このベンチクッションです。
ご主人の身長にぴったり納まるサイズで、TVカウンターの下に足を入れると、横になって仮眠を取ることができます。
TV台は、家族の思い出が詰まったエゾマツの無垢板を、以前の住まいから転用しました。
沖本さんによるカンナ削りやディテールに、手仕事の良さがよく現れています。
“ゆっくり寛いでいただけたら”との想いで設計しましたが・・・。
『”腹筋”に丁度いい!』と、早速、エクササイズです。(笑)
ご主人は、長年、サッカーの監督を務めており、
現場では、長時間立ったままでも平気で、工事を見守ってくださいました。
リビング/吹抜上部を見上げです。
2階は、すべて小屋組がみえるつくりとなっており、木組みの風合いを楽しむことがでます。
東面のハイサイドライトから、明るい朝日が入ります。
今回のこだわりポイントを、もう一つご紹介します。
上写真は、テーブル越しに東面の開口部をみたところですが、注目いただきたいのは「障子戸」です。
中央に正方形の「引手」がついています。
この障子戸は、「雪見障子風」のデザインとなっており、上の障子を開けることができます。
本来の雪見障子は、下の障子戸が開くのですが、
今回はベンチソファに座ったまま東庭を眺められるよう、三澤がオリジナルでデザインしました。
※東庭は後施工になります
キッチンは、Msオリジナルデザインです。
「吊収納」や「カウンター」高さなど、住まい手さんのご要望に応えて、丁寧に設計しました。
今回は、「吊照明」の納まりにもこだわりました。
ご主人の個室です。
収納棚、机など家具もすべて沖本さんの手仕事です。
個室の裏手は、広いバックヤードとなっており、
浴室~ウォークインクローゼット~洗濯室までが、一続きの空間として繋が
ります。
家事動線は、美しい住宅設計の”要”となります。
さて、最後にもう一度、外観写真です。
右隣にみえる、『黄色い外壁の建物』にご注目ください。
この建物は、実は、2017年5月に急逝した三澤康彦が19年前に設計したものです。
2017年11月。
Ms事務所に、はじめて設計依頼を頂いた今回の住まい手さんですが、
『最近になって、このお隣の建物の内部に入る機会があり、木をふだんに使った設計が気に入った』ことがきっかけで、相談に来てくださいました。
住まい手さん、沖本さんと仲間たち。
その後、一年半で、出会いの輪が広がり『手刻み・手仕事の木の住まい』が完成しました。
良い仕事は、『ものづくりの輪』として、時を超えてつながっていくようです。
住まい手ご家族の皆さま、
沖本さんとその仲間たちに、改めて感謝いたします。
ありがとうございました。
※外構工事後に、続編をレポートしたいと思います。
スタッフ 上野耕市
Y邸過去の記事
3.JパネルDボルトでのY邸の建て方の様子は こちら
2.大工さんと仲間達Y邸の手刻みの様子は こちら