日々の設計の仕事から離れ、本日は、普段では経験できないお仕事をさせていただきました。
プロカメラマンの撮影アシスタントです。
そんな今日、設計者目線ではなく、カメラマン目線でMsの設計を観察しました。
普段と違った視点で建築と向き合え、非常に観察眼が養われた一日となりました。
岐阜市の川原町にやってきました。
建築写真家の畑拓さん。Msの数々の竣工物件を撮って頂いています。
必要に応じて物を移動させ、サッシの開閉で光の入り方を調節するのが今日の私の仕事です。
午前9時。撮影が始まりました。
生憎の天気ですが、ここから、昼ご飯抜きで一気に撮っていきます。
こちらの家は古い借家を改修したもので、文子さんが京都造形芸術大学通信大学院で教鞭を取っていた時、学生達の改修設計課題のモデルに使用されました。
当時学生達の案が思いの他盛り上がり、改修プロジェクトが実現されたそうです。
住まい手さんは、漆教室を実施されており、こちらの写真は漆教室として実際に使用されている部屋です。
前面道路に大きく開いたサッシを開けると道行く人々の注目の的になる空間です。
ここで、畑さんが写真の点景に漆作業をしているカットが欲しいということで、私が生徒として漆研ぎの体験をさせていただきました。
漆を特殊な炭で研いでいきます。炭で研ぎ、漆を塗る、この繰り返し作業によって、作品が出来上がります。
漆を研ぐ感覚を擬音語で表現するならば、シャリシャリといった感覚でしょうか?
何とも言えない感覚が気持ちよくて、夢中になってしまいました。
ディティ―ルを撮る畑さん。
構造材に焦点を合わせ、寄って撮る姿が、獲物を狙う肉食動物の如くカッコよくて、
思わずディティールってどう撮るんですか?
と聞いてしまいました。
例えば・・・
木造建築は柱間が制限され、
大スパンを飛ばすことができないのが空間造りの難しいところです。
ここでは棟木にかかる垂木がキッチンを仕切る杉パネル(赤印)によってその連続性が失われています。
畑さん曰く、この杉パネルを隠して撮り、どこまでも連続しているように錯覚させるそうです。
寄って取るディティ―ル撮影のコツを知ることが出来ました。
今回撮影の締めは夜景の撮影です。
この日の岐阜市の日の入り時刻は18時15分でした。
夜景の撮影は日の入り後、30分間という限られた時間の中で勝負が行われます。
昼間の撮影であらかじめ撮影ポイントを数か所決めておき、30分で一気に夜の表情をファインダーに納めていきます。
一層、撮影アシスタントの仕事に緊張感が増します。
夜景の撮影が終わり、一息着いたとき外を見るとアウトドアランタンのようなものがぶら下がっていました。
これはバードフィーダーというもので、中に野鳥のエサが入っています。
聞くところによると、住まい手さんがイギリスへ旅行に行った際、朝食の時間にバードフィーダーに寄って来る野鳥を観ながら食べるのがとても優雅な時間で、
それを自宅でも再現したかったそうですが、未だに一羽も寄ってこないそうです。
撮影アシスタントは非常にエネルギーを使うお仕事でした。
しかし、一日アシスタントを通して写真の構図に撮影者の意図が垣間見えるようになった気がします。
新しい視点が見つかり、建築雑誌を見るのが楽しくなった限りです。
これからも、Msの竣工物件の撮影に携わる機会が増えると思います。
次の畑さんの撮影アシスタントのお仕事が楽しみです。
また、今回畑さんの撮影した写真は、またの機会にMs日記に登場します。
ディティ―ルの写真など構図に撮影者の意図を見つけながら写真を観察するとまた違った表情が見えてくるかもしれません。
是非注目してMs日記をお楽しみにしてください。
Msスタッフ中尾