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わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2020.10.30

神谷義彦さんの仕事〜設計手法、木の使いかた、庭のつくりかた、作図術について学ぶ

非常勤&リモートワークの村上です。先週、Ms事務所の今年2度目の研修に参加しました。場所は愛知県高浜市。「神谷建築スタジオ」を主宰される神谷義彦さんの設計する住宅を見学させていただき、設計手法、木の使いかた、庭のつくりかた、作図術について学ぶのが目的です。

神谷建築スタジオ https://www.kamiyastudio.com/

神谷さんは、Ms事務所代表の文子さんが岐阜県立森林文化アカデミーで教鞭を取っていた時の教え子です。文子さんからは、「卒業して数年たったころ、神谷君の図面を見かけて、『これ。誰の図面?』と聞いた覚えがある。 Msの図面も細かく描いていると思っていたが、それにも増して細かく丹念に描かれていて、感心した。」と聞きました。

神谷さんの設計する住宅はMsの設計と通じるところがあります。また、建物だけでなく庭もデザインされていて、それは最近文子さんが力を入れている、「庭を意識して設計する」というテーマにぴったりと符合するのです。

今回の日記では、神谷さんのつくる庭をご紹介いたします。

まずは神谷さんの自邸をうかがいました。リビングから外を見ると、まるで別荘地のような景色が広がります。庭の奥に見えるのは事務所。驚いたことに、この庭は神谷さん自らつくられました。土を入れて砂利を敷き、石を並べ、日本の山に生えている種類の樹木を選んで、一本一本植えていったそうです。その数、80種以上250本以上!(もう把握しきれてないです。神谷さん談)

神谷邸1.jpg

この日は雨降りでしたが、そのおかげで見ることができた小さな池。庭には排水の処理を行わず、池ができることを前提としたデザインが施されています。

神谷邸2.jpg

作図術やプレゼンの手法なども丁寧に教えていただき、次の住宅に移動しました。

hukama01_Rのコピー.jpg

                                                              撮影:神谷義彦さん

この写真は竣工当時のものですが、木々はずっと昔から同じ場所にいたかのように、自然です。アプローチに敷かれた石に導かれて行くと、屋根が切り取られ空間が明るくなりました。そこには雑木が植えられていて、まるで秘密の箱庭のようでした。

hukama08_Rのコピー.jpg

                                     撮影:神谷義彦さん

cul-de-sac.jpg

この住宅の脇には砂利が敷かれた小径があります。この小径沿いの大きな戸に寄り添うような緑。外壁の質感と砂利道にぴったりで、ヨーロッパの街を思い出しました。

2軒目の住宅は、シーサーが出迎えてくれました。奥さまが沖縄のご出身だそうです。

シーサー.jpg

こちらのお宅には石張りのテラスがあります。和室の地窓から見える、その石がとても良くて、しばらく石談義に花が咲きました。

和室.jpg

次はテラスを外部から見た写真です。建物が庭だけでなく周囲の景色と一体化しているのがお分かりになると思います。

kakizaki15_Rのコピー.JPG

                                撮影:神谷義彦さん

住まい手さんからは、「借景しているテラスの向こう側の田んぼが綺麗なので、また田んぼを見に来てください」と声をかけていただきました。

最後にうかがった住宅は、ちょうどお庭づくりの最中でした。こちらも石がふんだんに使われています。

工事中.jpg

2階の窓からは、窓の近くに植えられた樹木と、敷地の外にある樹木が連なって、緑が広がっているように見えます。それぞれの木が成長したらどのように景色が変わるのか、楽しみです。

3軒目.jpg

神谷さんから、愛知には良い石が産出される場所が何箇所もあるとお聞きしました。近場の木材に加えて、石も利用できるとは何と贅沢なことでしょう。

庭づくりでは、

・駐車スペースにコンクリートを打たない

・家を建てるタイミングに、後からだと植えられないような大きな木を植えておく

・可能な限り在来種で

など、教えていただきました。

また、外構計画では「アプローチが肝」。

生活者の視線と外部との目線を交わらないようにしつつ、日常の豊かさを出す。それを最大限憂慮して、建物の計画と一緒にアプローチの計画をされるそうです。

神谷さんが選んだ、人の手によって造形されない樹木は、のびのびと育っていました。庭やアプローチを考慮して設計された住まいは、短時間の滞在でも安らいで、本当に心地よかったです。神谷さん、惜しげもなく多くのことを教えてくださってどうもありがとうございました。

村上洋子