奈良県S邸 建物調査の様子
奈良県S邸 (2016.9月 MSD現場日誌 漆塗装記事はこちら)
調査日時:2014年6月
構造規模:木造二階建(一部地階有り)、長屋の内二戸 約320㎡
築年数:築100年以上、詳細は不明
担当:MSD / 住宅医 日野弘一
重要伝統的建造物群保存地区である今井町。 この伝統的な街並みの中に建つ七戸続きの長屋の内、隣り合う二戸の建物が調査対象になります。明治時代に建てられたと推定され、築100年以上が経過していると思われます。七戸続きの長屋の真ん中は現在駐車場になっています。今回の調査は二戸まとめての調査になりますので、北棟と南棟で分担して作業を進めていきます。
今回、改修工事を計画するにあたり建物の詳細調査を行う運びになりました。住宅医スクールの修了生の方、受講生の方、また関西学院大学、関西大学の学生に参加していただき、合計20名で調査を行いました。
今回は建物の常時微動測定を測定するために森林文化アカデミーから小原先生に来ていただきました。速報ではこの建物はやや硬めの建物であることがわかりました。また長屋の建物はみんなほとんど同じ振動をしていることなど、新しい知識も頂きました。地盤調査はスウェーデン式サウンディング試験を行いました。
北棟は居住用として使用されておらず、建物はほとんどスケルトンの状態でした。小屋裏に潜って調査…といういつもの調子ではなく、床から直接構造体の確認をすることができました。
もともと環濠集落という事もあり、建物の道路側には昔の水路があります。北棟は地下が当時のまま残されていたため、地階から水路水路に直接つながっていました。ちなみに水路は道路の下に埋められており、地上からはグレーチングで塞がれています。
ただ、水路が直接つながっているという事もあり、その周辺は木材の含水率が高くなっていました。材の足元が白く変色しているものや、腐ってしまっている材も多々確認されました。
昼食はお弁当を買ってきてみんなで頂きました。今回は調査の依頼者さんのご厚意で、調査建物の駐車場を挟んだ建物で昼食がとれるように場所を用意していただいていました。今回は初めて調査に参加してくれた方が多かったため、まずはそれぞれ自己紹介をしました。またいつもの通り調査の進捗具合の確認を行いました。
南棟はスケルトンの状態ではありませんが、最近は居住用には使ってらず物置として使用されている状況です。
開口部の幅、段差などを調べるバリアフリー調査、室内・室外の劣化状況を記録していく劣化調査など、診断レポートを作成するための情報を手分けして集めていきます。
こちらの建物も北側と同じように地下があったと思われますが、埋め立てられていて一階の床をめくると土間コンクリートが確認されました。小屋裏は点検口から入り込み、全体的に調査をすることができました。
二戸分の調査という事もあり、作業量が多くなってしまいましたが、夕方には無事調査を終えることができました。初めての方も多かったですが、指導員の方と協力をしながらてきぱきと作業をしていただけました。
ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。
MSD/住宅医 日野弘一