陽だまりが心地よい季節となりました。今週のエムズ日記は、東京スタッフの松岡利香が担当いたします。
先日伺った、川崎市の丸晴工務店さんの訪問ついてご報告させていただきます。現在、東京西部で設計中の物件があり施工をお願いしているため、打合せを兼ねて訪問させていただきました。
本社屋RC5階建ての周辺に、数棟の加工場と倉庫、モデルハウス、社員寮が点在しています。
2代目社長の濃沼広晴さんにご案内いただきました(写真中央奥)。本社向かいの加工場では、積まれていた無節の桧材が、見とれてしまうくらい美しく、よい香りにも癒やされました。
ふと見上げると、色彩豊かな絵が目に入ってきました。これが何か、わかりますか。なんと、棟札なのだそうです。昔は、上棟式にこれを掲げて街道をねり歩いたとのこと。今でも上棟式の日には現場に持って行くそうで、華やかな上棟式になりそうですね。
本社の地下にある木工製作の工房には、制作中の神棚があり、細かい細工が見事です。他の工務店さんからも注文があるのだそうです。
神棚を作っているのが、初代社長(現会長)のお父様。宮大工で、川崎マイスターに認定されている匠。建築現場は引退されているものの、神棚や木工製作や地元の小学校の講師もされており、まだまだ現役です。直接お会いしましたが、84歳という年齢を感じさせないお元気さで、頭も身体も使う職人さんの仕事を続けられていることで、若さを保っておられて素晴らしいと思います。
丸晴工務店さんは、材料のストックも豊富で、工房の別室には、立派な板材の在庫が出番を待って眠っていました。写真の神代杉のような貴重な材がさりげなく、何枚も立てかけられています。
別棟の倉庫にも、立派な広葉樹の大経材や板材がうずたかく積まれていました。
Msの住まいは広葉樹の柱やカウンターを効果的に使う設計なので、お仕事をご一緒していく中で、こちらの材を使う機会があるかもしれません。楽しみです。
丸晴工務店さんは、大工さんが10人もいる職人集団。
こちらは、若い職人さんの腕磨きのために造った東屋。
柱の足元は石場建てで、見事な「ひかり付け」の加工がされていて、美しいと感じるほどにぴったりと納まっていました。住宅だけでなく神社、仏閣も手がけるそうで、伝統技術の継承がしっかりなされていることは、建築業界にとっても宝です。
もう一つの加工場では、現在進行中の物件の構造材を加工中。現在も、板図を描いて手刻みしているようです。伝統技術が実践の場でも継承されていることがうかがえます。
モデルハウスのご自宅は、伝統技術を活かしつつ、モダンなデザイン。2階は、化粧野地板あらわしで、化粧垂木がリズミカルに並んでいます。8mの1本材の棟木が通っていて見事です。
家具も製作されるのだそうです。このローテーブルも自社製作。シェーカー家具を思わせるすてきなデザインですね。
天井を低く抑えた寝室は、落ち着く空間です。大壁で大きな面積の漆喰もコテあとがまったくなく、きれいに仕上がっています。木工事だけでなく、左官工事のレベルの高さにも定評があるとのこと。
浴室と脱衣室の間仕切りは壁で仕切っておらず(ガラスのみ)、今回計画中のプランに通ずるところがあります。サブウェイタイルも同行したKさんご夫妻が気に入られ、同様のタイルを計画に取り入れることになりました。
階段には照明が埋め込まれ、やさしい灯りが足元を照らす、心遣いのデザインも。
東京近郊に大工さんを10人も雇い、しかも若い職人さんの育成も行っている工務店が存在していることはとても貴重です。神社仏閣の伝統建築とモダンなデザインの住宅のどちらも手がけていて、伝統技術とデザイン性を兼ね備えた、ポテンシャルが高くバランスのよい工務店さんに出会えたことを、とてもうれしく思います。これから現場をご一緒させていただくのが楽しみです。よろしくお願いいたします。
松岡利香