Loading...
わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2024.09.07

丸亀の家・構造補強工事について

みなさん、こんにちは。ご機嫌いかがですか。ようやく朝夕は過ごしやすくなってきました。今回のエムズ日記は、非常勤スタッフの鈴木が丸亀の家の改修工事についてお話しします。

丸亀の家は、昭和3年に建築されて築96年になります。祖母から受け継いだ後、しばらくの間、空き家状態となっておりましたが、昨年住宅医スクールで学ぶ中で、改修の必要性を考え、改修設計を経て、現在工事を進めています。

前回のエムズ日記では、6月初旬の着工から解体工事、加工場での構造材の加工、基礎の掘方までの様子をお話しました。今回は、その後の構造補強工事について、お伝えしたいと思います。

(前回の日記はこちらからお読みいただけます)

7月中旬から、既存建物の骨組みの柱、梁の補強工事が始まりました。まず、既存柱の脚部の切断を行い、新しい柱、土台を取付ける工事を行いました。

既存の建物は、地面に置かれた束石の上に柱を立てる玉石基礎と呼ばれる構造であり、昨年8月に実施した詳細調査では、耐震性能や劣化性能が著しく低いことを確認しました。改修工事ではこれらの性能を向上させるために、鉄筋コンクリートの基礎を設け、その上に既存の骨組みを載せます。

そのために既存柱の脚部を切断し、新たに柱を追加し、それらの脚部に新しい土台を取り付けます。

大工の水田さん、川西さんによる既存建物の骨組みの補強工事が始まりました。

既存の建物は、束石の上に柱を立てる玉石基礎です。束石と柱は固定されていませんので、大きな地震を受けると建物が浮き上がったり、束石からずれて横へ移動したりします。また柱の脚部が地表面に近い高さとなっていたため、地面からの湿気による腐朽や白蟻の食害を受けやすくなります。

鉄筋コンクリートのべた基礎を新設するため、既存柱の脚部を土台の高さに合わせて切断します。切断する端部には、土台に差し込む枘(ほぞ)を作ります。

 

建物の北西角部の13cm角の柱に、著しい腐朽がありました。1階から2階への通し柱であり交換が難しいことから、腐朽部分を切り落とし、金輪継ぎで補修をすることになりました。

 

大工の水田さんが、金輪継ぎを作ってくださっているところです。

柱脚部分を新しい柱で継ぎ、土台で柱を受けたところです。

 

次は、長屋の隣住戸との境部に新設する、うだつ壁の骨組みを作り、既存の梁を補強する工事を説明します。

 既存の2階床梁を下から支えて補強する、新設の大梁を吊り上げます。その梁の下に新設の柱の枘を差し込み、さらにその新設柱の脚部を新設の土台に差し込みます。新設の土台は、鋼製束で下から支えます。

ここまでが、基礎の工事前に行った、骨組みの構造補強工事です。写真のように、建物が宙に浮いたような状態となりました。土台から下に垂れ下がっているのは、基礎のコンクリートの中に埋め込むアンカーボルトや、柱の脚部を固定するホールダウン金物のアンカーです。

土台の下面には、厚さ20ミリの気密パッキンを付けており、基礎のコンクリートを打設した時に、コンクリートが土台に接触するのを防止します。

7月末から基礎の配筋工事が始まりました。基礎の鉄筋は、予め基礎図面に基づき工場で成形加工されており、その加工鉄筋を現場で組んでいきます。現場で鉄筋を組んでくださっているのは、山下鉄筋の山下さんです。

加工鉄筋を1本づつ組みあげ、番線と呼ばれる細い針金で鉄筋同士の交点を結ぶ、とても手間のかかる工事です。私は配筋検査で、図面に指定した配置間隔を守られた、丁寧な配筋になっていることを確認しました。

写真の中央部で、鉄筋の配置が密になっている通りは、地中梁になる部分です。

8月初旬に、べた基礎の底盤部のコンクリートを打設しました。

底盤部のコンクリート打設後に基礎立上り部の型枠を作りました。土台と室内側の基礎立上り部の型枠には、隙間を設けています。この隙間から型枠内へコンクリートを打設します。

基礎立上り部のコンクリートを打設しているところです。

8月9日にコンクリートを打設し、お盆休みの6日間、コンクリートの養生を行いました。コンクリートの設計基準強度は、気温が25℃以上のため、温度補正(+6N/㎟)を行い、Fc=30N/㎟としました。炎天下の中でのコンクリート打設です。ポンプ車で圧送します。

養生が終わり、8月17日に型枠が外されると、このように美しいコンクリートの基礎が現れました。ここは玄関土間となる部分です。

建物の骨組みが基礎で支えられて安定しましたので、大工の水田さんが鋼管の支柱を外します。

 ここまでの現場写真でお気づきかと思いますが、改修工事の工程は、新築の工程と全く逆となり、上物の骨組みの補強を行い、それから基礎を作り、骨組みを載せる工程となります。上から下へと工事が進みますので。基礎が出来るまでは、建物の骨組みが宙に浮いたような不安定な状態になります。

このような時に、大きな地震や、台風が来ないことを心の中で祈りました。

またこのような既存建物の骨組みを、新しく作った基礎で受けるという改修工事は、関元工務店の能見さんも私も始めての経験で、これまでの工事を振り返り、このようにすれば出来るのですねと、現場で話し合いました。

ここまでの工事は、7月、8月の猛暑の中、進めていただきました。私は、8月5日の午前9時から12時までの3時間、配筋検査で鉄筋の上を歩いただけで、上着からズボンまで汗でずぶ濡れとなりました。

しかし鉄筋工事をしてくださった山下さんは、この現場は直射日光が体に当たらないので楽だ、と話されていたそうです。連日の猛暑の中、現場で工事を進めてくださっている方々には、感謝の気持ちでいっぱいです。

基礎を施工していた期間、加工場では大工の水田さん、川西さんが構造材の加工を進めてくださっていました。

加工が済んだ構造材が現場へ向けて搬出されます。

これからいよいよ、基礎完成後の骨組みの補強工事が始まります。ここからは、次回のエムズ日記をお楽しみに!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

鈴木康之