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わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2023.12.16

丸亀の家 改修計画の基本設計について

皆さん、こんにちは!

今回のMs日記は、非常勤スタッフの鈴木が、祖母から受け継いだ香川県丸亀市の小さな古民家を改修するために、8月に行った詳細調査以降の基本設計について、お話したいと思います。

前回の日記:はじめまして、鈴木です!

まず、9月初旬に敷地の地盤調査を行いました。敷地は、四国最大の平野である讃岐平野に位置し、近くには讃岐富士で有名な飯野山が鎮座しています。また、瀬戸内海国立公園を望む丸亀港や、香川県唯一の一級河川である土器川が流れています。敷地周囲の街並みは、丸亀城の城下町で、昔は金毘羅詣での人々が行き交う賑やかな情景でした。

讃岐富士と呼ばれる飯野山

讃岐平野、丸亀港、瀬戸内海国立公園の風景

丸亀城の景観

現在、建っている民家も、昭和3年に建築されて築96年程になります。年数を経た土地ですが、Ms建築設計事務所では地盤調査を大切に扱い、実施します。調査の方法は、スクリューウエイト貫入試験で行います。この試験では、デリケートな地中の土の締まり具合(密実か、ズボズボか)や、土質(砂か、粘土か、あるいは石などが混在しているか)や、建物を支えることができる硬い地層の深さや、その地層面は水平か、あるいは勾配があるのか、地下水位などが判ります。これらの情報は、建物の重量が比較的に軽い住宅等の基礎の設計には、重要なものとなります。また、試験機械も小回りが利くため、一定のスペースがあれば、建物が建っている状態でも調査をすることができます。

建物内部の土間から地盤調査をする様子

土間に小さな孔を開けて地中を調査します

建物周囲の地盤調査の様子

地盤調査の結果、地表面から1.5mの深さに締まった地層が水平にあることが判りました。

一方で敷地が、丸亀港や、大きな河川が近くにあることから、土砂災害や浸水害の危険性について、ハザードマップで確認しましたところ、南海トラフ地震時に液状化の危険が高いことが判りました。

下図は、液状化予想図(丸亀市公開のハザードマップ)です。

茶色部分:南海トラフ地震/最大クラス時に液状化の危険度がかなり高い地域を示します。

(赤い点:敷地の位置)

これらの情報を基に構造設計事務所の意見を受けて、既存の玉石基礎(コンクリートの基礎が無く、地面に置いた石などの上に木の柱を載せる方式の基礎)から、鉄筋コンクリートで一体となって建物を支える基礎(べた基礎)へ、基礎の置き換え改修をする方針となりました。

このように、長い年数を経過した土地に建つ建物の改修においても、地盤調査は大切なものですので実施し、基礎の設計に反映させます。

基礎の設計と併行して、改修後の住まいのプランニング(間取り設計)を、チーフの上野さんと進めてきました。改修後は、私自身がこの家に住み、設計事務所を開く予定です。

プランの特徴は、1階に、玄関、設計事務所、キッチン等の公的な空間、2階に、就寝の畳スペースがある居室、洗面コーナー、シャワールーム、ランドリースペース、と私的な空間としました。トイレは2階に設け、1階からも使えるようにと考えています。使用する時間が少ないわりにスペースが取られてしまう、浴室は設置しないことにしました。浴槽につかりたい時は、近くの銭湯に行くことにします。

プラン作成時に、三澤文子さんから指摘やアドバイスをいただいた中で、深く心に残っている事項は、以下の3点です。

●この建物の中心となる1階の事務所の位置に、しっかりと使えるキッチンを据えてみてはどうか。そうすればお客様にお茶やご馳走をお出しする自然な流れができるのでは。

●階段はシンプルな形状の設計とすること。他のスペースを確保するために、階段の形を複雑にすると、上り下りがし難く、転落しやすくなるので。

●トイレは気持ちよく使っていただくために、出入する時の姿が見えないことや使用音には十分配慮すること。

これら指摘からキッチンは対面式とし、事務所の中央に設けました。また、トイレの位置は事務所から離れた2階になりました。お客様には2階へ上がっていただくことになりますが、昇降しやすいシンプルな形の階段を設計しようと思います。

1階は間仕切り壁が無く、玄関、事務所、キッチンがワンルームであることや、キッチンが家の中心にあることが、私はとても気に入っています。

ほぼ間取りが固まりましたので、現在は今月21日にMs建築設計事務所内で開催される、図面のプレゼンに向けて、作図作業を進めています。プレゼンでは、我々設計者が熟考した住まいの良さが、住まい手へ十分に伝わるように、美しく、見やすい図面に仕上がっているかの確認を行います。

今後は、改修建物の構造を検討するため、構造図、軸模型(建物の骨組みが分かる模型)の作成を進めてまいります。こちらの進捗については、次回のMs日記でご報告いたします。

鈴木康之