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わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2022.02.05

「住まい」のメンテナンスと「暮らしかた」のメンテナンス

非常勤&リモートワークの村上です。今回は私が担当する、メンテナンスについて書こうと思います。

Maintenanceを英和辞典で引くと、「建物などの整備、保守」の他に「状況や状態の維持、持続」とあります。私は

・建物の整備、補修を「住まいのメンテナンス」

・状況や状態の維持、持続を「暮らしかたのメンテナンス」

ととらえ、住まいの状態と生活の質、どちらも向上するよう心がけています。

今日は「住まいのメンテナンス」と「暮らしかたのメンテナンス」について、それぞれ違う住宅でご紹介いたします。

1つ目は、築16年の広島市の住宅です。木製の外部階段の補修についてご連絡をいただきました。地元の工務店さんから金属製の階段に取り替えを提案されたが、木の家には合わないと思う。良い方法はないものだろうか、とのご相談でした。

そこで、「費用はかかるけれど、一度広島在住の住宅医に診てもらっては」とご提案すると、すぐに前向きなお返事をいただきました。

住宅医は、既存の木造住宅の調査・診断・改修設計・施工・維持管理などに関するスペシャリストです。この住宅の取りまとめは、広島の住宅医・佐藤裕希子さんが引き受けてくださいました。

さらに施工も住宅医の澤田博さんが担当され、安心感が2倍です!住まい手さんは、現場を一番よく知っている三澤康彦さんが亡くなり、元の姿を損なわず工事ができるか気にかけていらしたので、エムズ設計の住宅を施工した経験のある澤田さんに入っていただき、とても心強かったです。

この工事では、階段の他に外回りを中心としたメンテナンス工事が行われました。佐藤さんからの工事完了の報告を受けて、文子さんも、「三澤康彦設計の原型を残しつつ、しっかり改善して頂き、感謝の気持ちで一杯」と喜んでいます。

工事前の階段

踏板は腐食に強い45mm厚のアコヤ材に取り替えられ、木の家の風合いはそのままに、しっかりした階段になりました。階段下には新しく土間コンクリートを打ち、自転車などが置けるように改善しています。

住まい手さんのお陰で、遠隔地にあるエムズの住宅を、地元の住宅医とともに見守る仕組みづくりができそうです。今後につながる貴重な体験をさせていただきありがとうございました。

2つ目は、兵庫県の築25年の住宅です。住まい手は退職され、竣工当時とは生活も家族構成も変わり、暮らしかたのメンテナンスを考えている最中です。

1月下旬にお伺いしたリビングは、南面に広がる高窓から暖かい日が降り注ぎ、光とロールカーテンに映し出された木の影とのコントラストが印象的な美しい空間でした。

光と影が美しいリビング

ガラス面が特徴的な南立面図

さて、南面を写真でなく、図面でご紹介したのには訳があります。

この手描きの図面、岐阜県立森林文化アカデミーの辻先生が描かれたもの。実は辻先生がエムズ時代に初めて担当された、記念すべき住宅なのです!

住まい手さんに「辻先生は温熱設計の専門家としてご活躍です。」とアカデミーのウェブサイトをお見せすると

「あの辻くんが!!!」

と驚かれていました。「完成内覧会のとき、工務店さんがきれいに掃除して水を打った通路を、辻くんが汚れた靴で通って.…」と、当時を懐かしくお話しされ、あのクールな辻先生にもそんな時代があったのだと、クスっと笑ってしまいました。

住まい手ご夫妻も、このような形で「辻くん」と再会することになり、喜ばれているご様子です。私もご夫妻の生活がより良いものになるよう、辻先生のお力を借りながら「暮らしかたのメンテナンス」に取り組もうと思います。

村上洋子