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Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2026.05.30

【蔵出し!自慢の改修住宅作品】~「海老江のいえ」(2013)

Msウェブサイトはコロナ禍、大々的にリニューアルされましたが、当時私が、激務の最中であったため、掲載作品は最近の仕事を中心に少量にとどまっています。そこで私、三澤文子が担当する回は、「蔵出し!自慢の住宅作品」と題して、Ms日記にて未掲載の作品を皆様にご紹介させて頂きたいと思います。

大阪市内、海老江にあるこの住宅は、改修前は2戸一(ニコイチ)の長屋住宅でした。築年は改修当時、推定で102年。路上に荷物が置かれているのは、この写真が2012428日の詳細調査の日に撮られたからです。

延べ床面積30坪のこの住宅には、ご夫妻と娘さんがお住まいでした。

改修後の海老江のいえです。2戸一の長屋であるため、袖うだつでお隣の家を区切ります。長屋の改修では施工のために袖うだつや屋根のうだつが改修の手法として必要になります。

海老江のいえの前面道路は建物の西にありますので、お隣との界壁は建物の北、その界壁から南の外壁まで4470㎜ということで、間口はおおよそ2間半、奥行きはおおよそ6間の建物です。

 

2階壁が半間ずれていますが、1階には2階の柱の下に柱がなく、耐震性が乏しかったため、改修では2階の外壁の下に耐震壁をつくりその結果、写真手前の格子戸をあけると外部的な玄関ポーチができています。そのポーチから格子戸を開けることなく郵便物や新聞を受け取れるポストも造りました。

玄関ポーチです。格子には網が付いていますので、玄関引き戸があいていても、格子戸を閉め施錠をすれば、格子戸から虫が入ることなく風を通すことができますし、防犯面でも優れています。

玄関とポーチとの段差は20㎜まで。玄関土間から1階床までのステップの段差は180㎜まで。という基準(バルアフリー等級)があるので、それを守ることで玄関土間にステップが1段できています。

リビングは木に囲まれた落ち着いた空間になりました。

正面に見えるTV棚、その裏側が階段になります。南向きのリビングですがTV棚と階段で十分に日差しが入らないのですが、南の空き地に近いうちに建物が建つことが解っていたことから最善の階段の位置を優先したのでした。

右手に見える格子戸は玄関につながります。玄関から、この格子戸を開けリビングに入ると、八角形の独立柱が補強梁を支えています。

リビングの床はヒノキフローリング。清潔感がある香り、針葉樹なので足触りも柔らかく座の空間にも適しています。座テーブルが真ん中にありますが、リビングのコーナーには造り付けのベンチソファーがあってくつろぎのヌックコーナーになります。

リビングの東側はカウンター式のダイニングキッチンがつながります。

ダイニングキッチンは機能重視。キッチンがコックピットになっていて1階床の高さから150㎜低くなっています。そのためキッチンの調理台が、ダイニング側の椅子に座ってちょうど良い高さのテーブルになります。カウンターに座るお客さんのように、シンク側に立つ人と、会話が進むのではないかと思います。

天板は人工大理石のコーリアン。私も愛用者ですが、手入れが容易でいつまでも綺麗に保つことができます。

改修前の階段はとても急で、かつての間取りは、廊下がなく、個室を通過して個室に向かうといったプライバシーが保てない状況でした。そこで緩やかな階段をつくり、その階段脇の廊下から2つの個室と共用の収納室に入ることができます。

この階段室は、壁、天井ともシナ合板張りにダークブラウンに着色した杉を出目地としていて、スッキリしているものの個性的な空間になりました。

最後は階段から玄関を見下ろした写真です。階段左脇の窓からは太鼓障子の優しい光が入っていますが、いずれこのような明るい光が入らなくなるはずです。しかしながら東の玄関戸から格子戸を介した光が入ってきて、柔らかい雰囲気を保ってくれるのではないかと思います。

この改修によって、基礎がなく土台が土に埋まって腐朽もあり蟻害もあった状況を、新しい基礎をしっかり造り、確かな耐震性を得ることができました。また寒い冬を辛く感じることなく温かい室内で暮らすこともできるようになったはずです。さらに長屋住宅を分離して、1戸建てになったのも、今後の家族の暮らしには安心できる要素であったと思います。

改修に踏み込むことによって不安要素を安心に変えることができます。温かく木の香りのする空間も、きっと安心感を届けてくれると思います。

(三澤文子)