Msウェブサイトはコロナ禍、大々的にリニューアルされましたが、当時私が、激務の最中であったため、掲載作品は最近の仕事を中心に少量にとどまっています。そこで私、三澤文子が担当する回は、「蔵出し!自慢の住宅作品」と題して、Ms日記にてMsのウェブサイトに未掲載の作品を皆様にご紹介させて頂きたいと思います。
今回は2007年に竣工した「本巣の家」をご紹介します。岐阜県の本巣市にある70歳前半のご夫妻の住まい。息子さん2人は成人して県外におられて、当時はお二人のお住まいでした。

敷地南の川沿いにある敷地であるため、南が開けて日当たりも良くのびのびした家が出来ました。ただ以前の家は、水害を常々心配する地域にあったため、新しい敷地が川沿いということもあって、第一に水害を心配して敷地に2mの盛り土がしてありました。

前面道路は西側にあります。擁壁を基礎代わりにして盛り土をしていない部分にガレージ、その上に寝室を配置しています。写真では格子が見える部分です。
階段を上りきったところに、西に向いた玄関のガラス戸が見えます。玄関の庇は、玄関の壁から1200㎜の深さがあり、奥に引っ込んだ寝室の桁からは3040㎜の深さがあるので、屋根が大きくかかった力強くも軽やかさがある美しい屋根になったと思います。

玄関の横にある8帖の和室からリビング、その向こうにダイニングキッチンが見えます。どちらも南の窓から日差しがたっぷり入って、冬でも暖かさを感じます。

リビングは大きい吹き抜け。大工造作の造り付けのベンチソファーとTV収納棚が見えます。テーブル高さは、一般的には700㎜程度のところ、650㎜と低めです。その低めのテーブルにあわせて座面高さが350㎜のモノモノの「男の椅子」。日本人の身体になじむ「低座のくらし」の提案です。

2階にあがる階段越しに、南の窓を見ています。引き違いの掃きだしサッシは1間半の内法幅で、w2610㎜。既製品の掃きだしサッシをリビングやダイニングのようなメインの空間に使う場合は、この幅より小さいものは使わないようにしています。写真のような大きさのサッシだからこそ、伸びやかに見えると思うのです。

東側のダイニングキッチンからリビングを通して、和室とその南にある玄関室を見通しています。床の無地ヒノキ板が美しいです。陽に焼けてきっと良い色に変化していったことと思います。壁はゼオライト入り漆喰、その下地の構造用面材はJパネルです。天井は、この時期はJパネルを使わずに、厚さ30㎜本実杉板張りだったのでした。

西南の角の玄関室です。玄関戸はいつもガラスの框戸で、窓として捉えています。明るさを十分得られることと、景色が見通せるからです。防犯や、目隠しは格子網戸が外側に着いているので問題ありません。玄関に2本の戸が着いていることになり、防犯には抜群のはず。玄関戸の横に姿見の鏡があるので、ますます見通しが良い印象です。

東の下屋はサンルームというサービススペースです。洗濯室であり室内物干しでもあります。写真左手に手すりが見えますが、ここを下りると1階の勝手口へ。そしてガレージにつながり雨にかからずにガレージから室内に入ることが出来ます。また、写真右手にちらっと見えるのはキッチンです。

2階の寝室です。桁高が1088㎜と低いため、落ち着いた木の空間が出来ました。設計時は「こんなに低くて大丈夫?」と心配されていた住まい手ご夫妻も、できあがった空間を見て、「良い部屋ができた。」ととても喜んでおられました。
桁高を低く抑えることで、建物の高さがぐっと低くなり、盛り土をした高さの上にたつ建物でも圧迫感を感じさせません。この家の経験から、桁高1100㎜程の家を、自信を持って提案するようになりました。
あれから20年ほどの時間が過ぎて、お庭の樹木も育ち、木材も良い色に変わって、きっと良い歳の取り方をしていっていることでしょう。近いうちにお訪ねしたいと思います。
(三澤文子)



