Ms東京チームのK邸(横浜)とD邸(東京)の建て方は、北沢建築さん(これまでに何棟も一緒に仕事をしてきた)と、地元工務店さん(はじめてMsの物件を施工)との「JV(分担施工方式)」で行われました。材料調達と手刻み加工や建て方までを北沢建築さん、それ以外の工事全体を地元の工務店さんに担当していただくという方法です。
タイトルの「3人の棟梁」とは、
1人目、K邸の手刻みの棟梁 戸田さん(これまでにも、Msの物件を担当)。
2人目、K邸の建て方の棟梁 佐藤さん(Msの物件ははじめて担当ですが、とても頼りになる大工さん。建て方後、全ての大工工事を統率します)。
年明け早々に2つの物件の建て方が重なりましたが、北沢建築さんの材料調達力と棟梁を務めることができる腕のよい大工さんが複数存在することで実現しました。
建て方は、木の住まい造りの醍醐味のひとつです。
(K邸)
広葉樹の八角柱や尺梁がクレーンで吊り上げられ、若い大工さんが梁上で迎えます。
(D邸)
屋根勾配が異なる寄棟造の難易度が高い隅木が入った瞬間。
(K邸)
林立する柱の頭に梁が架けられ、空を突き上げるように伸びた通し柱に胴差が刺さり、組み上げられてゆきます。
D邸)
棟梁の頭の中には、図面と組み上げる順番が入っており、建て方中に図面を見ることはありません。
(K邸)
高いところから全体を見渡し指示を出し、要所要所は自ら組み上げます。
(K邸)
手刻み加工は、クリアランスが少ないため簡単には入りません。2人の大工さんが梁の両端で、息を合わせて各々のカケヤを振り下ろします。継ぎ手や仕口を入れるカケヤを打つ音がリズミカルに響きます。
(D邸)
時には、現場で仕口の加工をすることもありますが、手際の良さと正確さは、完成した架構が証明しています。
(上段:D邸、下段:K邸)
K邸では後日、D邸では当日に、上棟式を執り行いました。四方を清めて、棟札が棟柱に打ち付けられました。
立派な棟札は、北沢建築の社長 北澤さんが用意してくださいました。家の神様と大工の神様の名前が記されており、北澤さんのお母さまの筆によるとのこと。80代とは思えない、力強い筆致です。
挨拶する棟梁の北原さん。「大工と雀は軒で泣く」という言葉に、デイ邸の木構造がいかに難易度が高い架構であったか、そしてそれをやり遂げた達成感がうかがえます。
(K邸現場からみえる富士山)
今後も北沢建築さんと地元工務店さんとのJVを予定しています。また、多摩産材など、首都圏の木材を活かした住まい造りにも取り組んで行きたいと思いますので、実現したらMs日記でご紹介します。お楽しみに!
松岡利香