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わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2026.04.04

【蔵出し!自慢の改修住宅作品】~「富士ヒノキの家」(2012)

2011年1月22日土曜日、高校卒業後、何十年ぶりの同窓会で、かなり久しぶりに会うことができたS君は、お茶農家の跡取りで、今やお仲間と農業法人を立ち上げて地域で活躍しているという。その同窓会の二次会で「お爺さんが植林した、うちの山の桧を伐採して家を建てようと思っているが誰か設計できる人はいないのかな。」という会話を聞きつけて、膝元まで行き「私ができます!」と詰め寄ったのでした。他にも一級建築士になったクラスメートが、その場にいたのですが、「私にしかできない。」といって主張したのは、高校のクラスメート同士の「ノリ」だったのだと思います。ただ、富士山の麓に植林された富士ヒノキについては、すでに使用していたこともあり、クラスメートだったS君が、富士ヒノキの山をもつ自伐林家であったことに驚き、そして嬉しい気持ちになったことも、あわせて思い出されます。

S君家族の家、富士ヒノキの家は、周囲をお茶畑にかこまれた、富士山の麓、富士市内にあります。平屋にみえる棟の低い佇まいですが、実は2階建ての大屋根の家です。

敷地の東側に道路があり、敷地は広く敷地の西側には、倉庫と車庫そして離れがあります。そのため、かつてのお住まいも、建物前は広々として、ガレージに向かう車の通路でもあり農家らしさのある配置でした。そんなことで、かつてのお住まいとほぼ同じ位置に新築することになりました。

前面道路から見た東の外観です。格子網戸が付いた勝手口が見えます。

緩勾配の切妻屋根のなかに2階が有るなんて、想像できませんね。

写真の左奥に離れの瓦屋根が見えますが、主屋と変わらない高さの立派な建物です。

玄関の外観です。玄関戸はガラス框戸ですが、ここにも格子網戸がついていて、季節の良いときは風を通すことができます。また防犯にも有効です。

ダークブラウンの外壁は、杉板に浸透性の着色塗料を施しました。濃い色は耐候性もよく、落ち着いたシックな印象になります。ポーチの床は諏訪鉄平石敷きです。

玄関から、格子戸の奥のリビングを見通します。垂木は75㎜×150㎜のヒノキ材。S家の山のヒノキ材です。ヒノキの垂木は、その前も、その後も使ったことがありません。

和室8畳の茶の間の南にある板間です。

和室の続き間にするところを、板間の方が使い勝手か良いかもしれない。ということで多目的なスペースにしました。無地のヒノキ板が綺麗です。

この写真は片引き戸を引いたところですが、杉板にナグリ加工をして漆を塗った小壁をつくり、ちょうど建具が隠れるようになっています。煤ベンガラの漆の色が、ヒノキの白い色に映えますね。

ダイニングから大屋根の中の2階が見通せます。小屋裏のような2階ですが、お嬢さん二人の個室になっています。なかなか落ち着いた居心地の良い空間になったと思います。

小屋組の母屋や棟木など、断面に限りがある自前のヒノキ構造材なので、肘木を接合部に使用しているのが見えます。スギ材よりも強度のあるヒノキ材。さらに肘木も使って万全な構造設計だと思っています。

カウンターテーブルのあるキッチンです。キッチンはお嬢さんが勤務していたタカラのシステムキッチン。いつものMsウッドキッチンではないのですが、タカラのホーローのキャビネットはとても優れものです。

キッチンのコンロの前あたりに窓が見えますが、台所から玄関ホールにつながる窓です。室内をつなぐ窓があると風通しも良いし、空間がつながって楽しい印象の見え方になります。

建物が完成した2012年の11月には完成見学会を行ない、多くの方にお越し頂きました。写真には名古屋の阿部建設・阿部社長の姿も見えます。「阿部社長も見に来てくださったのだな。」と嬉しい気持ちで思い出しています。

お爺さんの植えたヒノキを使って造られたヒノキ普請の家。理想的な物語のようなお仕事をさせていただいたことに感謝の気持ちで一杯です。

私のふるさとの、富士山の麓の富士ヒノキの家です。

(三澤文子)