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わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2024.04.13

丸亀の家 構造について

皆さん、こんにちは。非常勤スタッフの鈴木です。一気に草木の芽吹きや開花が見られ、本格的な春が訪れました。

今回のエムズ日記も、丸亀の家の改修設計について、お話ししたいと思います。この家は祖母が長年暮らしておりしたが、私が受け継いだ後は、空き家の状態となっていました。

昨年、住宅医スクールで学ぶ中で、性能向上改修を思いつき、実現すべく設計を進めています。

(前回の日記はこちらからお読みいただけます)

今月2日には、改修工事をしていただく工務店さんに、改修建物の設計内容を説明し、工事費用の見積を依頼する現場説明会を行いました。改修建物の仕上表、平面図、立面図、矩計図、展開図、建具表、設備図、構造図なども揃い、建物の全容が見えてきました。

そのような中で、私が担当した構造図のお話をします。

祖母の家は昭和3年に建られ、築96年になります。基礎は地面に置いた石の上に柱を載せる「玉石基礎」です。

昨年行った詳細調査で、地盤の表層部が軟らかいことや、地震時に液状化の可能性があることが判りましたので、改修工事で鉄筋コンクリート造の「べた基礎」に置き換えることになりました。

既に建物が建っていますので、既存の梁を鉄骨のセパレーター等で下から支えて置いて、柱の脚部を新設の基礎高さに合わせて切断し、基礎が完成した後に載せる、という施工手順になります。

とても繊細な施工が必要となり、新築の基礎と同じ位のコストがかかります。詳細については、実際の施工時の写真をお見せしながら、次回以降のエムズ日記でお話したいと思います。

  写真は現状の玉石基礎です。

下図の鉄筋コンクリート造の基礎に置き換える予定です。

次に構造で配慮したのは、隣家棟との境になる部位の補強です。詳細調査で、2階の床梁や小屋梁は隣家棟と繋がっていることが判りました。改修後も隣家棟はそのままの状態で残りますので、現状の梁は切断することなく、形態を保持しなければなりません。

対応策として、既存の柱が立並んでいる『い』通りの120mm外側に、『イ』通りという構造芯を新設して、そこに補強のための構造架構を追加することにしました。この構造架構は、隣家と繋がっている梁を下からそっと支えて、形態を保持します。また屋根から上へ伸ばして、うだつを形成する骨組みにもなります。

黄色に着色している柱、梁が補強のために追加する構造架構(骨組み)です。黒く塗潰した梁や斜線のアミ掛けした柱は既存の部材です。

構造の3つ目の特徴は、既存のトラス(小屋組み)を残して活用することで、2階の室内には内部柱が立たないことです。トラスは三角形を組み合わせて形成される骨組みのため、柱で支えることなく、大きな室内空間をつくることができます。

また今回は、骨組みの形が美しいトラスを室内から眺められるようにしよう、と考えています。

緑色のマーカーが柱無しの室内空間を示します。

これらの構造設計は、三澤文子さんからの提案や構造設計事務所からの意見を受けて、構造図にまとめてきました。

作図作業を進める中で、構造の大切さを強く感じています。改修工事の場合は、既存建物の構造強度を見定めて、そこからどのように構造性能を向上していくかの検討が大切になります。

これから先は、設計したことが現場で、どのように施工(実現)されていくのかを確認していこうと思います。

ありがとうございました。 鈴木康之