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わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2022.06.12

T邸の梅雨じたく

非常勤&リモートワークの村上です。

梅雨の時期がやって来ました。最近はゲリラ豪雨があちこちで起こり、台風シーズンが終わるまで心配が尽きません。昨年、エムズ事務所にも、豪雨のあとに雨漏りがあったとご相談がありました。

風のない降雨時に雨漏りが起きる場合は、瓦がずれている、目に見える穴がある、など原因が明らかであることが多いのですが、問題になるのは台風などの強風に乗って小さな隙間から入り込む雨水による雨漏りです。毛細管現象もあり、場所の特定が難しく、雨漏りの原因を探してくれる専門の業者さんに頼むと、調査費だけで数十万円かかったりします。

雨漏りのご相談があったT邸は、コーキングが劣化して雨水が侵入していると考えられ、Tさんと懇意にされている大工の沖本さん(㐂三郎・http://kisaburo.info/)にコーキングを打ち直していただきました。しかし、その後も、強い南風が吹く、降雨が長時間にわたる、等の条件が重なったときに、水がじわじわと染み出ることがありました。でもそれが年に12回だからといって見過ごすわけにはいきません。

原因究明のために、T邸をうかがって2度の散水試験を行いました。1度目と2度目はそれぞれ別の方向から、ホースで勢いよく、念入りに散水しましたが、雨漏りは発生しませんでした。そこで沖本さんの提案により、今年の梅雨の前に、雨漏り箇所周辺の外壁を最小限取り除き、内部を確認し、状況に合わせた処置をすることになりました。

1回散水試験

Tさんのお住まいについては、以前エムズ日記に書かせていただきました。

築22年目のメンテナンス

5年前に亡くなった康彦さんが設計した、T邸が建てられる様子を、お隣でずっとご覧になっていたYさん。ご自宅の建て替えにあたりエムズに設計を依頼され、文子さんがデザインすることになりました。

この話には続きがあり、Yさんのご自宅が建てられる様子を、今度はTさんがずっとご覧になっていました。そして工事を担当していた大工の沖本さんの人柄と仕事ぶりをすっかり気に入られ、メンテナンスを依頼されるようになったのです。「これからもずっと住み続けていくために、若くて腕の良い沖本さんは頼りになる存在」と、Tさんはおっしゃいます。

雨漏り改良工事の当日は、前日まで大雨が降り、壁の中の様子を確認するには絶好のタイミングでした。沖本さんが丁寧に慎重にガルバリウム鋼板の外壁を外してみると…

ガルバリウム鋼板を外す沖本さん

前日までの雨で壁内に水が侵入していました。

傷んだ防水シートと防水テープを取り除き、小庇を取り付け、新しい透湿防水シートを張りました。万が一、壁の中に雨水が入っても、すみやかに排出できるように工夫されています。

この状態で雨漏りが止まったのを確認したのち、新しいガルバリウム鋼板の外壁を設置します。

Tさんの敷地とYさんの敷地の境界には、よく見られるブロック塀がありません。そのため、境界部分の外回りのメンテナンスが容易にできます。点検が簡単にできることは、思う以上にポイントが高いのです。

この裏口の、敷地境界を柔らかにあらわした感じが大好きです。

長期優良住宅の仕様からもわかるように、長持ちする住まいをつくるには、維持管理の容易さに加え、パーツの交換が容易にできることが不可欠です。加えて、住まい手が気軽に相談できる大工さんや設計者が身近にいると、問題が小さいうちに解決できて安心です。みなさんもこの雨の季節に、お住まいをしっかり観察して、早め早めのメンテナンスを行ってみてくださいね!

村上洋子