Loading...
わせ

Ms ARCHITECTSエムズ建築設計事務所

エムズ日記BLOG

2023.10.21

はじめまして、鈴木です!

皆さん、はじめまして!

8月からMs建築設計事務所に非常勤スタッフとしてお世話になっている、鈴木康之です。     今日はエムズ日記を書くことになった、いきさつをお話ししたいと思います。

私は38年間、大手住宅メーカーで技術職として仕事をしてきました。主には戸建て住宅の設計や、共同住宅の開発業務です。現在の住まいも自分で間取りを設計して、自身が勤める会社で建てました。工業化住宅で、地震に強く、断熱性、気密性も高く、設備機器も使い勝手のよい家です。その家で10年間快適に生活してきましたが、何か物足らなさも感じていました。室内を見渡して、それは何故かと考えてみた時、壁や天井のクロス材、室内ドアや銘木フロア材などの仕上げ材に、経年変化が感じられないことかな、と感じました。

室内ドアは木目柄の化粧シートが貼られ、銘木フロア材の表面は天然木の突板で、傷が付きにくく、ワックスがけを不要にするために、透明な硬いコート材で覆われています。どの仕上げ材も、メンテナンスの手間が少なく、末永く美しい状態で使えるようにと、よく考えて作られているのですが。

ある日、勤めからの帰りにふと立ち寄った書店で、「木の住まい」をデザインする、という本の表紙に目がとまり購入しました。しかし、仕事に追われて読む暇もなく、しばらくの間、本箱に立てて忘れておりました。それが59才の初夏に何気なく手に取り読み始めたところ、一気に引き込まれてしまいました。その本には、日本の木で住まいを建てることとはどういうことか、から始まり、本物の木の家の素晴らしさについて、分かりやすく写真や文章で書かれていました。建物の骨組みの柱や梁をあえて室内に出して、木の美しさや力強さ、安心感や解放感、そして経年変化の美しさを読者に伝えていました。

居ても立ってもいられず、著者の三澤康彦さんとMs建築設計事務所について調べると、三澤文子さんが住宅医スクールの講師をされていることを知りました。すぐにスポット受講を申し込み参加すると、土曜日の午後、ZOOMで70名程の設計事務所や工務店、大工の方々が集まって真剣に、既存住宅の性能向上をするための詳細調査や改修方法の勉強をされていて、このような世界があったのかと驚きました。その雰囲気は、とてもオープンで、優れた技術はみんなに共有して良い家を作っていこうという気持ちが講師にも受講生にも溢れているように感じました。大手住宅メーカーからの出席は私だけのようで、場違いのような気もしましたが、全く気になりませんでした。

この本がきっかけで、私は、これからは、本当の木の住まいの設計をしようと決心し、60才になったのを機に会社を辞めました。それから、木のことや、木の住まいについての知識を身に付けるため、今年2月より住宅医スクール、5月からはMOKスクールで学んでいます。

住宅医スクールでは、既存住宅の調査や、木材の劣化、建物の耐震性や温熱性、そしてそれらの性能向上改修について学びます。一年間のカリキュラムが終了した後に、自分で改修設計を行い、改修工事を実施してレポートをまとめ、住宅医検定会で発表、合格すれば、住宅医の認定を受けられるようになっています。

私は退職後無職でしたので、改修事例をどのようにしようかと悩んでおりましたが、香川県の丸亀市に祖母から受け継いだ20坪ほどの小さな古い民家があることを思い出し、これを改修事例にできないだろうかと考えるようになりました。

この家は、私が小学生のころ、よく大阪から帰省して遊びに行き、祖母との楽しい思い出が詰まった家ですが、祖母は亡くなり10年近く空き家でボロボロの状態です。

スクール後の親睦会の時に、三澤文子さんに、「このような小さな古い家ですが、改修は可能でしょうか?私は住宅医になりたくて、今年1年は木の住まいの勉強をしています。学んだことを基にして、一人で調査もやろうと思います。」と、相談したところ、

「勉強ばかりしていてはダメよ!アウトプットしなくちゃ。調査は一人でやるものではなく、人数を割り振って一気にやるものよ!!」

とご指摘をいただき、改修ができるかどうか、資料や写真を見ていただくため、後日事務所へ伺うことになりました。結果、改修は可能となり、私はMs建築設計事務所で、詳細調査の方法や報告書のまとめ方、改修設計の進めかた等を教えていただきながら、現在に至っております。

祖母の家は、昭和3年に建築された築95年の古民家です。8月に実施した詳細調査では(過去の日記→丸亀の住宅・詳細調査を行いました!)

外壁、屋根、床下、屋根裏で木材の劣化が進行しており、耐震性、温熱性、火災時の安全性も、現在の基準に照らして、非常に性能が低いことが分かりました。

一方で、屋根は、古民家では珍しいトラスという工法の骨組みが松の丸太で作られていることが分かり、劣化が進んでいないことから、改修後もそのまま生かして、室内から見えるようにしようかと考えています。

現在、詳細調査の実測記録を基にして、チーフの上野さんより指導を受けながら、既存建物の骨組みを表した構造図を作成しています。構造図を描いていると建物の骨格が手に取るように分かりとても楽しいです。95年前にこの家を建てた棟梁と、「このような考え方で梁を掛けたのですね」と、心の中で会話しながら作業を進めています。

併行して改修後の家の間取り設計を上野さんと共同作業で進めています。建物は間口三間、奥行三間の正方形平面の総2階建てで、延べ面積は20坪程と小さなものです。改修後は、私は丸亀で暮らし、1階に設計事務所を開設し、2階は住まいにしようと考えています。私は単身者ですので、大きな住まいは必要ありませんが、それでも20坪で、事務所兼住宅にしようとすると、思い切った間取りにする必要があります。将来の生活スタイルをじっくりとイメージしながら何を大切にして残し、何をあきらめるかを考え、プラン決定に向けて、三澤さん、上野さんと楽しい打合せをしています。

順調に設計、工事が進めば、来年秋には建物が完成し、12月の住宅医検定会で事例発表をしたいと考えています。そして、設計事務所を開業し、住まいのかかり付け医のような仕事を始めたいな、と考えています。1階には大きなテーブルを置いて、詳細調査に参加していただいた方々や、施工に携わられた方々、近隣の方々をお招きし、皆で美味しいコーヒーを飲みたいな!これが今の私の夢です。

これからMs日記では、丸亀の家の進捗を書いていきます。様々な難題に遭遇すると思いますが、それらを乗り越えて夢の実現に一歩ずつ近づいていくつもりです。住宅のリノベーションや、定年後の暮らしについて考えていらっしゃる方に、こういう方法もあることを知っていただけると幸いです。よろしくお願いいたします!

鈴木康之